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絵で見るやきものの世界
夏の夜は怪談話
百物語 さらやしき
百物語 さらやしき
中判錦絵
1831年 葛飾北斎
C東京国立博物館所蔵
 「うらめしや〜」という声が聞こえてきそうなこの幽霊は、怪談「番町皿屋敷」の主人公お菊です。この絵は葛飾北斎によって描かれた「百物語」シリーズの一枚です。百物語とは、夜な夜な仲間で集まって怪談話をするという江戸時代に流行った遊びです。北斎の「百物語」シリーズはこの「さらやしき」を含め「こはだ小平二」や「お岩さん」などの5枚が知られています。
 「さらやしき」は主人が大事にしていた皿を割ったとぬれぎぬをきせられたお菊が、惨殺され古井戸にすてられた後、夜毎亡霊となって出てくる話です。「いちま〜い、にま〜い」と皿を数える声が井戸から聞こえてくるという怪奇現象は、歌舞伎にも取り上げられています。この問題となった皿の残りと伝える物も幾例かあり、恨みを恐れて寺に奉納されている皿もあるのだそうです。
北斎のこのお菊は、首を何枚も連なった皿で表現しており、それにまとわりついている黒髪が不気味さを演出しています。皿には幾何学文様の絵が描かれているようです。しかし、口から霊気らしきものを吐いているお菊の顔は垂れ目で描かれており、ユーモラスさえ感じます。
 お菊はこの絵のほかにも広重画の「戯画お化け」にも登場しています。この絵では井戸の前を通りかかった焼継屋(やきつぎや)※に、お菊が「割れた皿を修理してほしい」と幽霊となって現れている場面です。もちろん幽霊ですので焼継屋は驚いて腰を抜かしているように描かれています。
※焼継屋:壊れたやきものに釉薬をかけ、再度焼き継いで直す商売人のこと。
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