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やきものの技法VOL.18 叩 き (たたき)


 叩き木と当て木で器の内と外から叩きながら成形する技法。粘土を叩き締めるため、軽くて丈夫な器ができる。叩き木と当て木は、土離れを良くするために、刻みを入れるが、これにより器の表面に繰り返しの陰刻文ができる。この凹凸が叩きと見分ける基本となる。結果的には装飾的な効果をもたらす。

 叩きの技法は紀元前からあり、中国の仰韶時代の土器にはその技法が既に用いられている。日本では、弥生時代に朝鮮半島から伝わり、古墳時代の須恵器にも叩きの技法が見られる。叩きは中国、朝鮮、日本の他、タイやミャンマーなどインドシナ半島、あるいはアフガニスタンまで広く分布している。

 日本の陶磁史においては、須恵器の時代までは盛んに用いられたが、中世においては衰退し、16世紀末から17世紀にかけて、再び朝鮮から導入される。このときは九州を中心とした技術導入であり、唐津焼(佐賀県)、高取焼(福岡県)、苗代川焼(鹿児島県)などで叩きの技法が始まった。また唐津や苗代川では、叩き木と当て木のことを、シュレーとトキャーと呼び、朝鮮の道具の類似性とともに名称も共通している。

 叩きの技法は、粘土の塊に拳や石で凹みを付け、それを叩き延ばしていく成形法もある。しかし一般的には、まず底に板状の粘土を置き、その上から紐作りで輪状に積み上げ、ある程度の高さになってから両側から叩き締める。これを繰り返して希望の高さの器にし、最後は叩きではなく、手でロクロ仕上げを行う。したがって叩きでできる基本的な形は、本来口の大きいものであるが、ろくろ仕上げによって口の小さい瓶や、口部の複雑な形態の水指などができる。
(鈴田由紀夫)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No24号より(平成4年発行)

■写真…叩き青唐津壺
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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