トップ >> やきものコラムセラミック九州 >> vol.35 チャツ(ちゃつ)

やきものの技法VOL.35 チャツ(ちゃつ)

青磁牡丹獅子文皿(裏面)
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
柴田夫妻コレクション


 チャツとは焼成の際に窯詰めに用いる小皿状の窯道具で、耐火粘土製と磁器製のものがあります。
 工程からいうと、器物全体に釉掛けし、高台のすぐ内側の釉を蛇の目状に剥ぎ取り、その部分にこのチャツの口部が当たるようにして窯詰めします。高台畳付は浮いた状態で窯詰めされるため、焼き上がった製品の畳付はしっかりと施釉されているというわけです。畳付が施釉されている、つまりガラス質の釉で覆われていると、使うときに木の膳や卓を傷つけることがないという利点があります。
 チャツを用いる窯詰め法は、中国の明時代の龍泉窯で青磁を焼造する際に行われたもので、この技術が有田にもたらされ、1650年代に青磁を生産の中で用いられました。チャツという呼称も、中国で皿のことを「ちゃ(石偏に世と木)子」(ちゃつ)ということからきていると考えられています。また当初は青磁に限られていましたが、1670〜80年代以降は白磁や染付製品でもいくらかみられるようになります。しかし18世紀初め頃を最後に、チャツを用いる青磁の生産は行われなくなります。

 高台内蛇の目釉剥ぎの窯詰め法が消えるなか、チャツを使った窯詰め法として、18世紀中頃から一般的になるのが、蛇の目凹形高台です。高台内を蛇の目釉剥ぎにするのは同様ですが、高台内中央を丸くくぼませるのが特徴で、その形から蛇の目凹形高台と呼ばれています。基本的には染付製品で、18世紀後半から19世紀にかけて、小皿、小鉢、猪口などに多く用いられました。高台畳付に釉が掛かるため、台などを傷つけないことや、ハリ支えのかわりに底垂れを防いで焼き上げることができるなどの利点がありました。



(宇治 章)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No45号より(平成21年発行)

■写真…青磁牡丹獅子文皿(裏面)
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
柴田夫妻コレクション
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
Copyright(C)2002 Fukuhaku Printing CO.,LTD
このサイト内の文章や画像を無断転載することを禁じます