トップ >> 筒井ガンコ堂のガンコスタイル >> vol.12 やきものとのつきあい(2001年)
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 これまで月替わりで11回にわたって、初心者を対象にやきものおよびその周辺について語ってきた。それらはすべて私個人の考え方であって、ほかの人はまた別の考え方があるのは言うまでもない。

 これまで何回も断ったように私はやきものについては素人である。今まで正式に研究したことはない。ただ、長い間雑誌の編集の仕事をしてきて、やきものを特集したことが何度もある。そのつど付け焼刃の勉強をしては全国を歩いて産地を訪ね、それぞれのやきものを見、多くの関係者の話を伺ったりした。古陶磁の名品といわれるものも多く見てきた。そういう経験の蓄積はあるが、決して系統立ってはいない。雑知識ばかりだ。素人を自認するゆえんだが、私はそれで満足している。また、専門家は厳密さ、正確さを要求されるが、素人ならかなり思い切ったことも言える強みがある。そういう立場で、短い間ではあったが、これまで語ってきたつもりである。

 私がやきものに興味を持ち、好きなのは、佐賀県で育ち、現在佐賀県に住んでいることが大いに関係していると思う。
 物心ついたころから、もちろん雑器が主だが、家では代々使ってきたやきものがずっと身近にあった。それらを日常的に使っていた。そのことがやきもの好きの出発点である。

 また佐賀県ほどいろいろな種類のやきものを産する県はほかにあるまい。歴史も古い。唐津焼は室町時代に遡るといわれるし、有田は磁器の発祥の地だ。そして、それらの逸品を見ようと思えば、比較的簡単に見ることができるし、その機会も多い。
 絵でもそうだが、私のやきものの評価の基準は究極的に、盗んででも手許に置いておきたいかどうか、だ。実に単純明快。国宝、重文でも、やきもの屋の棚にある皿や壷でも、そのことに変わりはない。
 そういった自分なりの見方なり基準なりを身につければ、おのずと見えてくるものがあると私は信じている。

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photo ■筒井ガンコ堂
本名:筒井泰彦(つつい・やすひこ)
1944年佐賀県生まれ
平凡社にて雑誌「太陽」編集に従事。
佐賀新聞社で文化部長、論説委員など歴任。
元「FUKUOKA STYLE」編集長。
著書に「梅安料理ごよみ」(共著)、
「必冊 池波正太郎」等
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