トップ >> 筒井ガンコ堂のガンコスタイル >> vol.3 古伊万里入門(2001年)
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染付唐獅子文大皿
(そめつけからじしもんおおざら)
1630〜1640年代
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵品

 テレビの「開運なんでも鑑定団」は現代の風潮にマッチした、よく出来た娯楽番組だと思う。それこそ「なんでも」だが、時たまに「古伊万里」が持ち込まれ、ひげの中島何とかさんが「いい仕事をしてますねえ」とか言ってほんものと鑑定すると一千万円以上の値がついたりして、「ひょっとすると、おじいちゃんが大事にしていたうちのアレも?」と、視聴者の射倖心(しゃこうしん)をいやが上にもあおる。
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 この場合の「古伊万里」は、骨董の世界で珍重される、ごく初期の、殊に染付を指しているようだが、古伊万里の世界は実はもっともっと広いのである。そのことを、私たち素人に分かりやすく教えてくれたのが、先ごろ福岡で見た「古伊万里のすべて」展だった。
 一口に古伊万里というが、その定義からしてちょいとややこしい。そのややこしいことを解きほぐし、最新の学術的研究も踏まえながら、時代、様式ごとに分類・整理して、あくまで一般的な鑑賞者を対象に、代表的な作品を展示し、親切な作品解説を付して見せてくれた。何ともぜいたくな、しかも画期的な展覧会だった。  佐賀県立九州陶磁文化館の監修で、福岡、東京展は終わったが、あと広島、神戸、香川を会場に七月まで巡回展が行われる。機会があればぜひご覧になることをお勧めする。

 この展覧会の図録がまたよく出来ている。編集を担当し、「古伊万里入門」を巻頭に書いているのは九州陶磁文化館の鈴田由紀夫さん。「入門」の中で、骨董の世界(鈴田さんは「骨董」という語句は使っていないけれど)が江戸前期の古伊万里を偏重することをやんわりたしなめているのを、いかにも鈴田さんらしい見識だと感心したのだった。
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photo ■筒井ガンコ堂
本名:筒井泰彦(つつい・やすひこ)
1944年佐賀県生まれ
平凡社にて雑誌「太陽」編集に従事。
佐賀新聞社で文化部長、論説委員など歴任。
元「FUKUOKA STYLE」編集長。
著書に「梅安料理ごよみ」(共著)、
「必冊 池波正太郎」等
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