
赤煉瓦ガラス美術館開館三周年記念特別企画 海を渡った陶磁器たち― オールド・ノリタケ名品展
<会期:平成14年3月29日〜7月28日> |
| 平成14年6月19日 |
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今回は梅雨の晴れ間に、JRを使ってちょっと遠出をしてきました。場所は北九州市の門司港にある、赤煉瓦ガラス美術館です。いつもはガラス作品を展示されている美術館ですが、今年で開館三周年を迎えるにあたり、特別企画「オールド・ノリタケ名品展」と題した陶磁器の展覧会が開催されていました。門司港はレトロ情緒を感じさせる土地で、煉瓦づくりの建物があちらこちらにあります。海峡プラザというビルの2階にあるこの美術館も、入口がシックな赤煉瓦でつくられていました。
館内に入ると、「オールド・ノリタケ」と呼ばれる陶磁器約50点が、ずらりと並んでいました。またこの美術館は、「海峡を望む美術館」とも言われ、その言葉通り、港の様子を眺めながら作品を鑑賞できる、ガラス張りの展示室もありました。
さて、「オールド・ノリタケ」という陶磁器は一体どういうものなのでしょうか。「ノリタケ」といえば、有名な陶磁器メーカーですが、この「ノリタケ」の前身である森村組を創立した森村市左衛門と森村豊兄弟によって、「オールド・ノリタケ」と呼ばれている陶磁器がつくりだされたのだそうです。明治10年半ばから、ほぼ半世紀に渡って、日本の優れた職人らによってつくられた華麗な陶磁器を、森村兄弟は、欧米に向けて輸出していたそうです。日本でつくられていたにもかかわらず、輸出用だったということで、今ではあまりその姿を見ることはありません。
作品を前にすると、緻密な描写と細かな細工の豪華絢爛さに圧倒されます。ロココ、ビクトリア様式、さらにはアール・ヌーボー、アール・デコ調とその幅広いデザインの多様性にも驚きます。また「オールド・ノリタケ」には、「盛上げ技法」・「金盛り技法」・「ビーディング技法」・「コバルト技法」という4つの代表的な技法があるということで、今回はこの技法に注目しながら作品を見ていくことにしました。
「盛上げ技法」とは、成形した生地の上に、ちょど絞り出し器のようなチューブ状の器具をつかって、泥しょうを絞り出しながら、線や面を描いていく日本独特の技法だそうです。彫りを施すのとは、また違った緻密な浮き彫りのような仕上がりが特徴的です。「スワン盛上げ花瓶(1890年代)」という作品もこの技法が用いられています。スワンの一羽一羽が、この技法で描かれ、羽の一枚まで丁寧に細工が施されています。深いグリーンの器面に、白のスワンが更に引き立つように浮かび上がっています。滑らかなカーブを描く器形が奥行きのある空間を演出しているようで、実物より大きく感じさせる迫力があります。(実物は高さが約22cmくらい)
豪華なデザインを更に引き立てていたのは「金盛り技法」。これは先ほどの盛上げ技法によって下地をつくった上から、金彩を施したものです。またこれにエナメルを施して、宝石のような装飾を施したものもあります。はじめは、陶磁器の作品に、部分的に金細工を付けてあるのだろうと、見ていましたが、これも陶磁器の技法のひとつと知って、驚きました。「金盛りマロン窓絵薔薇蓋物(1910年代)」もそのひとつですが、白磁の白さと絵付けされた赤色を引き立てるように、金が施されています。盛り上がった文様部分に金が施されているので、古伊万里などに見られる絵付けによる金襴手とは、また違った豪華な雰囲気があります。ご一緒に見学されていた方々も「これが陶磁器なの?」と少し驚かれているようでした。
 
さて「ビーディング技法」という名前は、あまり聞きなれませんが、ヨーロッパなどの窯の作品に見られる技法なのだそうです。これは器の表面や取っ手部などの狭い範囲に、細密な点盛りを施していく、気の遠くなるような技法です。「金彩ビーディングカトレア花瓶(1890年代)」の表面にもこの技法による、点盛りを見ることができます。輝く金彩の上に、小さな点がたくさんのることで、きらきらとした乱反射が起こり、器の輝きが一層強く印象に残ります。金彩が一定のリズムの地紋になることで深い赤紫色のカトレアの花を決して押し殺すことなく、お互いが引き立っています。この作品では、格子状になるように点盛りがありましたが、もっと細かく、線を感じさせるほどの作品もありました。
細工による技法を見ていきましたが、顔料による「コバルト技法」というものもあります。これはドイツから輸入されたコバルト化合物という顔料をつかった技法で、鮮やかな瑠璃色が特徴です。この瑠璃色を一般にロイヤルブルーと呼ぶそうで、この深い色合いが金彩を引き立て、高級感が増幅されます。いくつかのコバルトの展示作品の中で、私は「コバルト金彩薔薇絵クッキージャー(1890年代)」という作品にひかれました。ぷっくりとした愛らしい形に、かぐわしい薔薇の花が一面に描かれています。ともすると甘くなりがちなところを、このコバルトが部分に配されることで、心地よい緊張感が生まれているようです。また濃いブルーによって薔薇の花のみずみずしさが引き立ってもいます。
見学に来られる方の中には、何度も足を運ばれる熱心なファンや、オールド・ノリタケのコレクターの方もいらしゃるそうです。初めて訪れた方は「陶磁器なの?」、「外国製じゃないの?」と思われる方もいらっしゃったようで、説明を見ながら皆さん驚かれていました。私も同様の驚きがあり、明治の、日本職人の技術と、その感性の豊かさに感嘆させられました。海外向けということで、豪華さに目がくらみますが、器の形や、文様の配置にどこか日本的なところも感じ、それが落ち着きと、陶磁器の奥深さを印象づけているようでした。
■取材雑記
この展覧会は7月28日までとのことですが、これ以降は常設である「エミール・ガレ」、「ドーム兄弟」、「ルネ・ラリック」というオーナーのコレクションでもある、代表的なガラス作家の作品が並びます。また併設されている、体験も工房では、ガラスエッチング体験(有料)ができ、オリジナルグラスをつくることもできます。海と、レトロな風景も眺めることができるこの美術館。夏のおでかけにいかがですか?
●赤煉瓦ガラス美術館
【所在地】福岡市北九州市門司区港町5番1号海峡プラザ2階
【電 話】093-322-3311
【開館時間】10:00〜18:00
【入館料】一般(高校生以上)500円、小・中学生300円 |
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