
新春展「ハレのうつわ―酒器と重箱―」
<会期:平成17年12月21日〜平成18年1月15日>
|
| 平成18年1月1日 |
|
皆さん、明けましておめでとうございます。今年もうまか陶をどうぞよろしくお願いします!
さて平成18年最初の「行ってきました見てきました」は、新春にふさわしい展覧会「ハレのうつわ―酒器と重箱―」をレポートいたします。場所は佐賀県立九州陶磁文化館。
今回の展覧会では、肥前古陶磁を中心にお正月などの祝事に用いられたであろう重箱や酒器を展示し、ハレの日の膳や食文化などを知ることができる構成です。江戸時代から明治時代にかけてつくられたものを中心に「酒器・盃」、「酒器・盃台」、「酒器・盃洗」、「酒器・銚子」、「酒器・徳利」、「重箱」と6つのコーナー別に50件71点が展示。
また祝いの席の食文化を記した古文書の紹介や解説パネルなども展示。私が取材に訪れた年末は、海外からのお客様も多く、日本の伝統的な食文化を興味深そうに鑑賞されていました。
 |
| ▲染付七福神文酒器揃 |
おせち料理などで馴染みの深い重箱は古くは漆器製のみだったそうですが、肥前磁器でも上質でハレの日にふさわしいものが作られるようになります。また祝事の酒宴ではそれにふさわしい酒器が用いられてきました。今回の展示作品もそういった器がメインで、文様や意匠にも祝事にふさわしいものが多くみることができました。
「酒器・盃」コーナーでは、まさにお祝い気分という作品をご紹介。1850〜1860年代のもので「染付七福神文酒器揃(有田窯)」です。さまざまな大きさの盃に七福神が描かれているもので、「南里嘉十(なんりかじゅう)」の箱書きをともなった酒器セットだそう。南里嘉十とは有田で、幕末から明治時代にかけて活躍した名工の一人です。七福神は現在でも縁起物としてお正月によくみかけます。これでお酒を飲めば、いい初夢が見られそうですね。
 |
| ▲色絵貼付梅鶯文べく盃 |
めでたい文様を描いただけではなく、「色絵貼付梅鶯文べく盃(1710〜1780年代・有田窯)」・「染付海草文亀付べく盃(19世紀・三川内焼)」などおもしろい趣向を凝らした盃も紹介されていました。
「べく盃」とは酒宴を盛り上げるために趣向を凝らした盃のことで、その多くはお酒を飲み干してしまわないと手を離せないものや、天狗やひょっとこの顔を模したものなどがあります。現在もお土産屋さんなどで見かけることがあるので、ご存知の方もいらっしゃることでしょう。
「色絵貼付梅鶯文べく盃」は盃の中央に梅の木と鶯が細工されていますが、実はこれ、底に穴があいており、指で押さえて飲まないとお酒がこぼれてしまうようになっています。また「染付海草文亀付べく盃」も盃の中央に小さな亀の細工がありますが、お酒を注ぐと亀が浮き上がり、飲み干すと亀が沈むという楽しい仕掛けになっているそうです。皆で冗談をいい合いながら楽しく酒宴が盛り上がる様子を思い浮かべることができます。
現代の酒宴ではあまり見かけることが少なくなった「盃台」、「盃洗」を紹介したコーナーもありました。「盃台」はその名のとおり、盃をちょっと置いておくための台。「盃洗」は、盃を洗うための水をはっておく鉢です。盃を何人かでまわしながら飲む際に、この盃洗で洗ってから相手に盃を渡すのです。これは江戸後期にひろまったもので、「盃洗」の多くは鉢形の器にずんぐりとした足が付いています。
 |
| ▲さまざまなお銚子 |
盃ともに酒宴に必要なのは「銚子」と「徳利」。「銚子」はもともと金属製のものが多かったのですが、肥前磁器では1650年代ごろからつくられはじめ、18世紀になると多く見受けられるようになります。
寛政期から天保期(1789〜1844年)の風俗を記した「寛天見聞記」にも金属製から磁器製へと移り変わっていた様子が記されているそうです。徳利は古くから存在しましたが、とくに細長い筒状の徳利は燗をつけてそのまま席に出せる便利さから、幕末期から明治期にかけて普及します。
現在ではこの形の徳利を「お銚子」とも呼ぶことからも、燗をつける役目が本来の「銚子」から「徳利」へとかわってきたことが分かります。
 |
| ▲青磁染付龍形水注 |
さて「べく盃」という楽しい盃があったのですから、注器にもきっと楽しい趣向のものがあるはずと思っていたら…ありました!
「青磁染付龍形水注(1820〜1860年代・有田窯)」です。この注器は輪形になっており、ちょうど龍がとぐろを巻いた様子をかたどっています。
お酒を注ぐことを考えるとちょっと使いにくそうですが、祝いの席を華やかにしてくれそうな手の込んだ細工がほどこされています。
最後は「おせち料理」にはかかせない「重箱」のコーナーをご紹介しましょう。重箱は「食籠(じきろう)」とも呼ばれ、人が集まって会食する際に料理の盛り付け器として用いられるものです。またお花見や紅葉狩りなどの行楽にも便利なように、重箱と徳利、皿がひとつにおさまる携帯用の提重(さげじゅう)というものもあったそう。重箱にお正月のおせち料理を…というのが定着したのは江戸の文化年間(1804〜1818年)だそうで、肥前磁器では江戸後期に多くなります。
 |
| ▲染付山水家屋文重箱・瓶 |
会場には華やかな絵付けの重箱が並んでいましたが、中には不思議な形の重箱がありました。「染付山水家屋文重箱・瓶(1670〜1680年代・有田窯)」です。
重箱の一番上段がすぼまった形をしていますが、この部分がまさに「瓶」になっているのです!これにお酒をいれ、下の重箱にはお料理を入れるようになっており、提重のように行楽などに用いたようです。それにしても見た目にも楽しく、使って便利な器に関心させられます。
この重箱が用意されるだけで、楽しいことがありそうだと何だかワクワク気分になりそうですね。
会場ではこれらの古陶磁に加え、酒器や重箱の使い方や、祝いの席の料理内容を解説した古文書なども紹介され、またこれらの器を使っている様子を表現した浮世絵などのパネルも展示。昔の人々の祝膳の様子を詳しく知ることができます。こういった祝いの席に用いられていたであろう陶磁器は、絵付けが丁寧で上質なものが多いそう。今も昔もここぞという節目にはちょっと気合を入れるのは同じようです。
九州陶磁文化館ではお正月にふさわしいこの展覧会を早春より楽しんでいただこうと、元旦から開館しています。帰省の折に、観光の合間にぜひハレの器をお楽しみ下さい。皆さんのお正月料理はどんなものでしたか?
■お知らせ
新春展「ハレのうつわ―酒器と重箱―」を学芸員さんが解説するギャラリートークが開催されます。予約不要&参加費無料です。
日程:平成18年1月7日(土)14:00〜15:00予定
●佐賀県立九州陶磁文化館
【所在地】西松浦郡有田町中部乙3100-1
【電 話】0955-43-3681
【駐車場】有
【休館日】月曜日・12/29〜12/31
|
|
|