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田中丸コレクション 九州古陶磁名品展
<会期:平成18年10月25日〜10月30日>
平成18年10月25日

  さわやかな秋晴れの続く毎日です。今回のレポートでは「田中丸コレクション 九州古陶磁名品展」をご紹介いたします。この展覧会は佐賀の老舗デパート玉屋の創業200周年記念の特別企画として開催されるもの。
 田中丸コレクションとは、現在の佐賀県牛津町出身である田中丸善八氏によって蒐集されたコレクション。田中丸氏は百貨店経営の傍ら、九州の古陶磁器をメインに体系的に蒐集。そのコレクションには全国的にも名品と呼ばれる作品が数々あることで知られています。
 今回の展示ではこのコレクションの中から九州古陶磁の魅力を網羅した100点余りが紹介。なかでも今春、重要文化財に指定された「絵唐津あやめ文茶碗」が出展されるとあり、初日の朝から多くの陶磁器ファンが会場を訪れていました。
 
▲重要文化財「絵唐津あやめ文茶碗」
 会場はやきものの産地別に紹介され、また田中丸氏が茶道に造詣が深かったことからコレクションの美術品を用いた茶室を再現した展示もありました。まずは、今回の展示紹介でも注目を集めていた「古唐津」コーナーを紹介いたしましょう。ここでは茶碗を中心に、花入れや向付け、ぐい呑みといった古唐津が並びます。

 ひときわ目立つのは、やはり先にご紹介した重要文化財「絵唐津あやめ文茶碗」。口径12cm、高さ9cmほどの大きさで、桃山時代のものだと推測されます。どっしりとした安定感あるフォルムに、簡素かつ生命感あふれるあやめの鉄絵がほどこされています。絵唐津の茶碗では初めての重要文化財指定とのことで、名実ともに絵唐津茶碗を代表する作品といえるでしょう。
 
▲「絵唐津草花文茶碗」
 古唐津の魅力としては野趣あふれる生命感や天真爛漫な作風があげられますが、まさにこの天真爛漫な作品として紹介されていたのは「絵唐津草花文茶碗」。
 茶碗の外も見込み鉄絵による文様で埋め尽くされており、絵唐津の意匠としても珍しいタイプだそうです。持っているだけで、なんだか心躍るような気持ちになりそう…そんな茶碗ではないでしょうか。

 古唐津のコーナーではやはりその力強さや野放図な魅力にひかれるのか、じっくりと立ち止まる男性客が多かったようです。
 
▲「古伊万里色絵団龍文鉢」
 一方女性客に人気があったのは、やはり華やかな色絵や落ち着いた絵柄の染付など有田地区のやきものたちのようです。
 「古伊万里色絵団龍文鉢」もその艶やかさで注目をあつめます。濃厚な赤や緑、金といった色を多用された金襴手(きんらんで)と呼ばれる様式による作品。金襴手の多くは海外の輸出用とされていますが、こちらは国内向けの商品であっただろうと推測されているそうです。
 「古伊万里色絵団龍文鉢」に施されているような文様は「赤玉雲龍」と呼ばれ、ひとつのタイプとして確立していることから、人気の高い絵柄であったと考えられます。また厚みのあるがっしりとしたつくりで、鉢を伏せた形がまるで兜そっくりなことから「兜鉢」とも呼ばれています。
 
▲「柿右衛門染付手毬花図角皿」
 金襴手様式と同じく、海外輸出用として人気を博したものに柿右衛門様式もあります。しかし、18世紀以降になると、ドイツ・マイセン窯やフランス・シャンティーイ窯などヨーロッパ各地で磁器の製造に成功し、柿右衛門様式の写しがつくられるようになります。この影響で海外からの注文は減少し、国内向けの柿右衛門様式の製品が作られていくようになります。
 まさにその国内向け用の制作が行われた1810〜1860年代の柿右衛門様式の作品として「柿右衛門染付手毬花図角皿」が紹介されていました。
 柿右衛門様式というと濁し手に色鮮やかな色絵を思い浮かべる方も多いかと思いますが、このような染付も製造されていたそう。
染付の濃淡で描かれた手毬花は上品で涼しげなイメージ。宝暦5年(1755年)に刊行された「絵本野山草」という冊子には、この手毬花と同じ意匠の絵図が掲載されているそうです。もしかしたら絵図を参考にしたなどの関連があるのかもしれません。

▲左「薩摩甫十瓢箪茶入 銘玉水」 ・右「八代象嵌陶枕」

 田中丸氏の出身地である佐賀のやきもの「古唐津」・「古伊万里」などを紹介してきましたが、このほかにも九州各県の古陶磁が展示され、とくに茶陶が充実しています。中には、近江小室藩主で茶人・造園家としても活躍した小堀遠州が注文したとされる茶入れ「薩摩甫十瓢箪茶入 銘玉水」も展示。
薩摩焼では重厚な黒釉の茶入れが多く焼成されていたとのことで、まさに遠州好みであったのでしょう。

 また茶陶だけではなくちょっと珍しい作品も展示。「八代象嵌陶枕」です。その名のごとくこれは枕。八代焼は現在の熊本県八代市付近で焼成されたやきもの。陶枕は夏季用の枕として用いられていたようですが、確かにひんやりと冷たい感触がよさそうではありますが、現代の感覚からするとちょっと硬くて痛そう?!この陶枕には花や動物のにぎやかな象嵌がほどこされ、使うというより眺めて楽しそうなものです。
 
 やきものの他にも田中丸氏が実際にやきものを使っている様子を写した写真や、コレクションの古陶磁を著名な人物がスケッチした絵画パネルなども展示。
幅広く収集されたコレクションからは、田中丸氏が本当に地元九州のやきものや文化を愛していたことをうかがい知ることができます。
この展覧会はこの後、京都市にも巡回します。お近くの方はぜひ足をお運びください。
 


■お知らせ
下記の日程にて京都における展覧会が開催予定です
・ 九州古陶磁名品展 田中丸コレクション
期日:平成18年11月9日〜12月17日
場所:表千家北山会館(京都市北区上賀茂桜井町61)

●佐賀玉屋
【所在地】佐賀市中の小路2番5号
【電 話】0952-24-1151
【駐車場】有り