トップ >> うまか陶ジャーナル >> 「匠の蔵」開発商品・第1弾 うまみを引き出す「至高の焼酎グラス」

うまみを引き出す「至高の焼酎グラス」
 今年30周年を迎える有田陶磁の里プラザ・有田焼卸団地では、様々なイベントが催されています。なかでも恒例となった11月23日からのちゃわん祭りでは「至高の焼酎グラス」と銘打った新商品が登場すると聞き、これは是非取材をせねばと有田卸団地に足を運びました。新商品開発の推進役となった有田焼卸団地協同組合の青年部会長を務める百田憲由氏(百田陶園社長)にお話を聞きました。

―先ず、至高の焼酎グラスのお話をお聞きする前に、今回のちゃわん祭りでは特別企画展「『匠の蔵』焼酎グラス展」となっていますが、この「匠の蔵」とはどのようなものですか?

百田氏
 今年は有田焼卸団地が30周年という節目の年ですから、6月ぐらい
▲有田焼卸団地協同組合青年部会長
                    百田憲由氏
から話合いをしていましたが、「今までの企画展ではいけない」という意見がでてきました。ご存知のように有田焼の低迷が続いていますが、有田焼の復興を成し遂げるには商工一体となって取組まなければならないというのが私たちの考え方です。
 物づくりからプロモーションまで一貫したコンセプトを基に、窯元と商人が一体となって取組むことが有田の産業の復活には欠かせないことだと思います。
 今回ちゃわん祭りの企画展を考える際に、この考え方に賛同されるところと一緒に物づくりの原点からやり直し、毎年新しい商品を開発していこうということで、「匠の蔵」というものを立ち上げました。

―なるほど、ここからどんどん新しい商品が出てくるということで「蔵」なのですね。ところで、その匠の蔵の第1弾の商品が「至高の焼酎グラス」ということですが、一歩先に「香酒盃」が出ていましたが、どうして焼酎グラスだったのですか?

百田氏
 これには私も悩みました。焼酎グラスではなく別の新しいものをと考えましたが、やはり今焼酎の人気が高いですし、焼酎グラスのニーズもありますので、これで行こうと決まったわけです。「香酒盃」と対抗するつもりはありませんので、それぞれが競い合いながらも有田の産業のために相乗効果を狙っていければいいと考えています。

―「香酒盃」は香りをコンセプトに開発されていますが、「至高の焼酎グラス」はどういうコンセプトなのですか?

▲至高の焼酎グラスの数々
百田氏 開発をするに当り、先ずは焼酎を知らなければいけないということで、組合のメンバーと一緒に地元の井上酒屋さんに講義を受けに行きました。
 そこでは、色んな形のグラスに同じ焼酎を入れてもらい全員で飲みくらべさせてもらいました。全員の感想を聞き終えた井上さんからは、「飲み口が大事」だと教えられました。
 更に、井上さんの紹介でたくさんの蔵元さんを紹介してもらいヒアリングをした結果、焼酎は「うまみ」が大切なのだということも分りました。この「うまみ」を引き出すグラス開発がコンセプトとなったわけです。

―焼酎のうまみを引き出すために、どういう機能をつけられたのですか?

百田氏 焼酎のうまみを引き出すには、アルコールの気化を早めることで焼酎本来のうまみを引き出せるということで、広口の形に決定しました。
 更に飲み口のよさ、切れを考えて75度の角度にしています。この角度だと手首を返すだけで飲めますから、女性の方でもおしゃれに飲めますよ。(笑)

―この外側の突起はどうして付けられたのですか?

▲竹をイメージした焼酎グラス
百田氏 フォルムは竹をイメージしています。竹というものは昔から器として使われていました。それは竹がもつ機能性の高さにあったのですが、その機能性を生かすためにここに節をつけています。これにより持ちやすくなっていますし、ロックを入れた時の結露がこぼれてこないようになっています。また、底を高くすることで温冷ともに保温性が増してきます。
 更に、内側の底部中央には突起がついています。これも焼酎をうまく飲むための大事な役割を果たしています。実は、これは井上さんのアイデアなのですが、焼酎がグラスの中で対流しやすいようにつけたものです。対流することで焼酎の味のバランスがよくなるというアドバイスを受けて付けたものです。広口なので上の焼酎が自然に底に落ちていきます。落ちてきた焼酎は底についている突起で上向きに流れを変え、対流が起きるように工夫したものです。

―へえー、おもしろいですね。でもこの形ができるまでは相当試作をされたのではないですか?

百田氏 そうですね。サンプルは200個ぐらい作ったと思いますよ。型でつくろうとすると外側の節が型から抜けないし、このシャープさが出てこない。口のつくりが厚かったり、持ったときのバランスが悪かったりとか様々な試行錯誤を繰り返しました。しかし、今回は妥協しませんでした。「うまみ」を引き出す焼酎グラスをつくるということで、徹底的にこだわったつもりです。
 お陰で井上さんにも蔵元にも太鼓判を押してもらいましたよ。焼酎をうまく飲むための機能とデザイン性が出せたと思っています。

―商品カタログを見せてもらうと色々な絵柄がありますし、普段のネーミングではなくイメージ的なネーミングをされていますね。

▲ギフトボックスもおしゃれ
百田氏 今回6軒の窯元と一緒に仕事をしたのですが、これもこだわって焼酎グラスに合う絵柄をつくってもらいました。例えばイカの絵がありますが、焼酎を飲むときはイカの塩辛やスルメが合うので、こんな感じのイカの絵をと頼みました。ネーミングはイカといえば佐賀県の呼子が有名ですから「呼子」という名にしました(笑)。また、こちらの金のジパングは王様の気分を味わっていただけるんじゃないですか(笑)。
 今回は売り先も考えて、一般家庭用・プレゼント用・法人贈答用・飲食店用とそれぞれに合う絵柄ということも選定の条件にしました。プレゼントにも使っていただけるように、1個用と2個用のシックでオシャレなケースも用意しています。このケースの蓋はこう外して裏返せば、何とコースターになります(笑)。使わないときは食器棚ではなく、インテリアとしても利用できますよ。

―ちゃわん祭りで「至高の焼酎グラス」をお披露目するためにギャラリー白磁にディスプレイされていますが、どういうイベントを計画されていますか?

▲有田焼卸団地内のギャラリー白磁
百田氏 もちろん「至高の焼酎グラス」全32種類のラインナップの展示と、全国の有名な焼酎の銘柄を井上さんに揃えてもらいました。またここでも至高の焼酎グラスで試飲していただくようにしています。それも名水百選の龍門の清水とロック専用の製氷機を用意していますよ。

―えっ、でもちゃわん祭りが終わったら、ここのディスプレイはなくなってしまいますよね。

百田氏 ええ、でもその後はここの商社の各ショップにならびますよ。まだ販売前ですが既にたくさんの予約をいただいていますが、これだけ全ての工程にこだわってつくったものですから、もっと多くの人に知っていただき、楽しんでもらいたいですね。
 それから、来年の開発商品のアイデアをうまか陶の読者の方にも出していただきたいと思っています。

ということで、読者プレゼントをいただきました。プレゼントは後ほど掲載いたします。30周年の節目に立ち上げられた「匠の蔵」。来年はこの蔵からどういう商品が出てくるのか、今から楽しみです。

取材協力:有田焼卸団地協同組合

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