館蔵「江戸の至宝―鍋島焼の芸術」
<会期>平成16年4月3日(土)〜6月27日(日)
 江戸時代、日本で唯一の藩窯(はんよう)で作られた鍋島焼は、鍋島家御用品として、将軍家、天皇家などへの献上品として作られた最高級のやきものです。一尺(約30cm)・七寸(約21cm)・五寸(約15cm)・三寸(約9cm)と規格化された木盃形とよばれる器形。一線一画さえおろそかにしない精緻を極めた線描からは、気品と緊張感が溢れています。優秀な陶工たちを集め、染付や釉薬をはじめとする素材の質、成形、焼成技術の粋を凝らした鍋島焼の美しさは、まさに江戸時代の至宝といえます。
 文禄・慶長の役(1592〜98)を契機に、大陸から渡来した陶工の李参平が伊万里周辺から磁石を発見したことにより、伊万里焼が作られるようになったと伝えられています。鍋島藩は有田皿山代官を設置し、国内外の市場へ向けて製作されるようになった伊万里焼の運営を管理することで、藩財政に利益を上げるようになりました。その一方、藩独自の窯を設け、高い品質と技術を誇る磁器の焼成を開始します。
 藩窯の監督ともいえる陶器方役副田(そえだ)氏の系図によると、鍋島藩窯は寛永(1624〜44)時代に岩谷川内(いわやごうち)に副田日清を派遣した頃にはじまり、寛文(1661〜73)時代に南川原(なんがわら)へ、延宝(1673〜81)時代に大川内山(おおかわちやま・現在の佐賀県伊万里市)に移窯し、明治4年(1871)の廃藩置県で藩が無くなるまで、鍋島焼が焼成されました。大川内山以前の作品を古鍋島(初期鍋島)や松ヶ谷手と称し、その製陶技術の最盛期は、元禄時代を中心とする時期と考えられています。
 藩窯では、作陶技術の流出や鍋島焼の模倣を禁止し、下手な者は解職させ、出来の悪い品を廃棄するなど厳しい掟がありました。献上品としての完成度の高さを維持し、作風がマンネリにならないよう、常に陶工たちには技術向上が求められたのです。
 鍋島焼に描かれた文様は、優れたデザイナーによって江戸や上方(京・大坂・堺)で流行していた意匠、吉祥文、染織文様、身近な野菜などを取り入れ、独創的な意匠が採用されました。絵具は、染付の他に赤・黄・緑を基本とし、同時期に市場で流行していた華々しい古伊万里とは対照的に、絵具の少なさを格調の高さに昇華させた配色効果で人々を魅了しました。単なる文様という枠を超え、鍋島焼ならではの作風を確立したのです。
 今展では時代的な変遷に沿い、初期の古鍋島から盛期に作られた鍋島焼を中心に展示いたします。また、製作陶工への指示図『図案帳』と一致する伝世品もあわせて展示いたします。やきものの最高峰、鍋島焼の世界をご堪能ください。

■上写真:染付 桜花文 皿 鍋島 江戸時代(17世紀末〜18世紀初) 口径20.4cm
■主な展示作品
「染付 水仙文 皿 鍋島」江戸時代(17世紀末〜18初)口径20.2cm
「色絵 蒲公英文 皿 鍋島」江戸時代(17世紀末〜18初)口径19.9cm
「染付 桃文 皿 鍋島」江戸時代(17世紀末〜18初)口径30.9cm
「色絵 三瓢文 皿 鍋島」江戸時代(17世紀末〜18初)口径20.5cm
など105点

会場 財団法人 戸栗美術館
住所 東京都渋谷区松濤1-11-3
電話 03-3465-0070
入館料 一般1,030円/高大生730円/小中生420円
団体割引は20名様以上で200円割引
※アートサークル(年会費)随時受付中 3,800円/お申込当日より有効です。
交 通 「渋谷駅」より徒歩10分
京王井の頭線「神仙駅」より徒歩5分
開館時間 9:30〜17:30(入館受付は17:00まで)
休館日 月曜日(祝日の場合開館、翌日休館)
URL http://www.toguri-museum.or.jp/