表現者 河井寛次郎 〜いのちと心の造形
<会期>平成16年9月1日(水)〜11月7日(日)
 アンドレ・マルローは、河井寛次郎の晩年の激しい作風を見て、「ベートーヴェン」と呼びました。民藝の文脈で語られることの多い寛次郎ですが、近代の陶芸家の中でも、最も自己を自由に表現した作家でした。
 卒業した東京高等工業学校と、その後勤務した陶磁器試験場で身に付けた高度なテクニックを評価された新進作家の時代。柳宗悦らと知り合って、無名の工人が作り出した日用品の簡素で力強い美しさに惹かれた民藝運動の時代。そのような研鑽の日々を経て、戦後は自らの内面から湧き出てくる感動を、そのまま造形の中に表現しうる自由な境地に到達したのです。魔術と呼ばれた釉薬の技は、得意としていた辰砂(赤)をはじめ、呉須(青)や民藝調の海鼠、独自に造り上げた晩年の碧釉など多彩を極め、いずれも珠玉のような輝きをみせています。晩年には用を離れた陶彫や陶板も試みています。
 形への飽くなき関心は、寛次郎を木彫や家具製作、書、文筆など、陶芸以外の分野にも踏み込ませています。著述の中で「新しい自分がみたいのだ―仕事する」と述べるように、自らに枠をはめることなく、晩年に至っても新たな分野に挑戦し続けたのです。寛次郎の創作活動は、そのように奔放に繰り広げられましたが、いずれの作品にも、骨太な寛次郎の個性が色濃くあらわれています。寛次郎は名もない職人の質実な仕事を限りなく尊敬していましたが、自身の歩みはまぎれもなく自由な表現者に至るものでした。
 この展覧会では、晩年の自由な境地を示す「泥刷毛目鉢」、「三色打薬扁壷」など代表作を中心に、初期や民藝期の陶芸作品、木彫作品、デザインした家具やキセル、書などもあわせて展示して、表現者河井寛次郎の到達点を多面的に検証します。

会場 アサヒビール大山崎山荘美術館
住所 京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3
電話 075-957-3123
入館料 大人700円(600円)/高大生500円(400円)
※( )内は20名以上の団体料金
交 通 JR京都線「山崎駅」、阪急京都線「大山崎駅」より徒歩約10分
開館時間 10:00〜17:00(入館は午後16:30まで)
9/20までの金・土曜日は19:00まで(入館は18:30まで)
休館日 月曜日(祝日の場合は翌日火曜)
URL http://www.asahibeer-oyamazaki.com/
同時開催 ・講演会
日時:9月25日(土)16:00〜
講師:鷺 珠江氏(河井寛次郎記念館学芸員)
※先着30名、受付は15:00〜