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佐賀県の陶芸作家
 
作家写真 中島宏
(武雄市)
中島宏:1941年、武雄市生まれ。69年に弓野古窯跡に窯を築き、独立する。青磁に取り組み、77年に日本伝統工芸展奨励賞、81年に第1回西日本陶芸展総理大臣賞、83年に日本陶芸協会賞を受賞する。「中島青磁」と呼ばれる独創的な作品は高い評価を受け、96年にはMOA岡田茂吉大賞、藤原啓記念賞、佐賀新聞文化賞を受賞する。作品集のほか、95年には随筆集「弓野四季釉彩−中島宏の世界」を出版した。日本工芸会正会員。県重要無形文化財工芸技術保持者。
中島宏さんは昨年夏、龍泉など中国の古窯を訪れた。旅の模様は、NHKの特集番組「青を極める」として放送された。湖の水辺や草におおわれた窯跡から陶片を拾い、ルーペで丹念に見る。中島さんの顔は、子供が宝物を見つけた時のように輝いていた。
中島さんによれば、国の文化財に指定されている青磁17点(うち国宝3点)はいずれも龍泉で作られた。青磁の美を追い求めてきた中島さんは、源流を再訪した旅を「先祖の墓参り」と説明する。「名品を生んだ環境、原料がそろっていることがあらためてわかった。松の木の一本、一本にも感動した14年前に比べて、今度は冷静に一歩下がって見ることができた」という。

磁器を焼く窯元に育った中島さんは、実は家業を好きになれなかった。「今でいう3Kの仕事、泥だらけで」と若いころを振り返る。転機になったのは、父親に連れられて始めた窯跡の調査だった。古唐津や染め付けの中に交じる青磁の陶片に、きらりと光るものを感じた。幸田露伴の本の中に見つけた「心を込めることができる仕事」との言葉が後押しした。

「青磁は難しい」と周囲からいわれ、逆に「それなら自分の存在感が出せる」と進む道を決めた。窯跡を歩き、文献をひもとき、手探りで進んできた。「土、釉(ゆう)薬の研究は限りがなく、面白い。うまく焼けたとしても、これがいいと決めつけずに、常に変えてきた」と日々新しいものを追ってきた。

中島さんは、創造する喜びを「これは自分だけのものという快感」と表現する。「常に白紙からスタートする」という姿勢は、作陶の技法にも表れる。中国の青銅器に触発され、彫りを入れ、かき落としを手がける。印象派の絵から、釉薬を重ねて色に深みを出す試みに挑む。

中国の旅では、博物館で多くの名品を手に取ることができた。「先人の仕事に学んだ上で、しばられないようにしたい。だれも見なかった世界、自分だけしか見えない夢を追っていきたい」と暗中模索を続ける。

龍泉では、雨上がりの晴れわたった空をながめ、湖水を走る船上から、えも言われぬ夕方の空に遭遇した。「宇宙を作品に表現したい。空は無限に広がる。連想し、空想し、目に見えないものを」と目指す地平は果てしないようだ。

中島さんは今年6月、東京・銀座の日動画廊で個展を開く。同画廊での陶芸家の個展は30年ぶりといい、50点を出品する。本格的な個展は4年ぶりで、「新しいものを創(つく)り出すのが私の仕事」と年明けから制作に取り組んでいる。さらに新たな青磁の世界の展開が期待できそうだ。
出展作品
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粉青瓷線彫文壷

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青磁貫入文組鉢

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■弓野窯
武雄市西川登町弓野
JR武雄駅から車で20分。日出城バス停から徒歩5分。
駐車場6台。
電話0954(28)2068
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。
※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。
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