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やきものの技法VOL.16 貼付け(はりつけ)


 素地に文様を貼付ける技法で、貼花(ちょうか)ともいう。型からぬいた文様を貼付けることが多いが、紐状の粘土を貼付けて文様を作るやり方もある。レリーフ状の陽刻文様を器に施す場合、ロクロで器を成形した後、素地の上に貼付ける方法と、器の表面を彫り込み、文様を浮彫にする方法、さらに文様そのものを彫り込んだ型を用いて、器胎を成形すると同時に陽刻文様を施す方法の3通りがある。

 貼付けの技法は、古くは6世紀の中国の青磁や緑釉の作品にこの技法がみられ、7世紀の唐時代の三彩には盛んに用いられている。日本ではあまり発達しなかったが、17世紀以降の各地の窯で時々用いられている。ヨーロッパにおいては、18世紀のドイツの塩釉によるストーンウェアやイギリスのウェッジウッドなどに、精巧な型抜きの貼付け技法がみられる。

 九州の陶磁器の中では、17世紀前半の三股(みつのまた)青磁(長崎県)や18世紀の鍋島青磁(佐賀県)に優れた貼付けの作品がある。写真の甕は、苗代川(なえしろがわ)(鹿児島県)で盛んに作られたもので、龍の文様が貼付けの技法で表されている。ただし型抜きではなく、紐状の粘土を貼付け、指や箆で押えている。この手の半胴甕には大黒文様を型抜きにして貼付けたものもある。
(鈴田由紀夫)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No22号より(平成2年発行)

■写真…黒釉龍文甘酒半胴甕
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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