トップ >> 筒井ガンコ堂のガンコスタイル >> vol.5 有田陶器市・買い方の秘訣(2003年)

 4月29日から1週間、恒例の有田陶器市が催される。ことしは第100回ということで地元でも熱の入れ方が違うようで、100万を超える人出を見込んでいるようだ。
 歴史はもちろん、その規模も日本一のやきもの市である。JR九州の上有田駅から有田駅までのメーンの通りだけでも約4キロ。その両側にびっしり、もともとある店舗と臨時の露店が並ぶ。ほかに上有田駅の南北にも特色ある窯元がある。メーンの通りの裏通りにも見逃せない窯元がある。柿右衛門窯や卸団地の周辺にも魅力的な窯元がある。市の期間の店の数は、全部合わせれば千を越すだろう。漠然と歩いていてはいくら時間があっても足りないだろう。一日はすぐ暮れてしまう。

 効率のよい買い物の秘訣をお教えしよう。一番よいのは、会期前に一度、ザッと下見をして、店の品揃えの傾向を知り、好みに合う店をマークしておくことだ。当日はそれらの店を重点的に回り、ゆっくり買い物をすればよい。その際、前以て店の人と顔見知りになっておけば更によかろう。
 次に、ことしは丼鉢をとか、ぐい呑みをとか、小皿をとか、買うつもりの物を絞ることだ。すると不思議なことに、店頭や店内の棚からそれらの物が浮き出て、目に飛び込んでくるのだ。5、6軒そうやって試せば、大体、品物の品質とか値段とかの「当たり」がつく。その上で、自分の好みやふところ具合に従って買えば、きっと満足いくだろう。

 私が特にお奨めしたいのは、老舗の商店や有名窯元の端物やキズ物だ。大抵、棚ではなく床の上に直接、籠や箱の中にまとめて置いてある。普段ではとても手の出ない、デパートのショーウィンドーなどでため息をつきながら見たことのある品物が3割引などで売ってある。しかも、それらの店でいうキズ物は、彼らにとってこそキズ物だが、私たち素人では、言われなければ識別できないほどのキズで、家に持って帰れば、ほとんど一級品なのである。
 いろんな楽しみ方のできる有田陶器市。存分に、知恵を働かせて、楽しんでいただきたいと思う。

photo ■筒井ガンコ堂
本名:筒井泰彦(つつい・やすひこ)
1944年佐賀県生まれ
平凡社にて雑誌「太陽」編集に従事。
佐賀新聞社で文化部長、論説委員など歴任。
元「FUKUOKA STYLE」編集長。
著書に「梅安料理ごよみ」(共著)、
「必冊 池波正太郎」等
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