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■中村清六 白磁展
 [併陳]中村恵美子作品
<会期:平成13年6月19日〜6月25日>
平成13年6月20日

会場photo 佐賀県重要無形文化財保持者である中村清六さんの個展にでかけてきました。場所は福岡三越内の美術画廊です。今回は中村さんのご長女でもある陶芸作家 中村恵美子さんの作品も併陳されていました。会場にはワインカップや大鉢までバラエティに富んだ作品が70点ほど展示されており、若い人からご年配の方まで幅広い年齢層の方が作品を楽しんでいらっしゃいました。あいにく中村清六さんとはお会いできませんでしたが、清六窯 岡田さんからお話を伺うことができました。
 中村さんと言えば「巧みなろくろ技術による白磁作品」で有名ですが、私も数回作品を拝見したことがあります。白磁というと「研ぎ澄まされた・洗練された」といった印象をもちますが、中村さんの作品はそれだけではなく何か人をほっと和ませる優しさがあります。今回はどうして「和み」が感じられるのかを考えながら鑑賞してみました。

白磁艶消温故知新壺 岡田さんによると見所は「円熟」と「さらなる技への磨き」にあるとか。昨年、作陶生活70年を迎えた中村さんですが、新しいことにどんどんチャレンジなさっているのだそうです。そういった意味の作品として、中村さんが座右の銘としていらっしゃる「温故知新」という言葉が入った「白磁艶消温故知新壺」をご紹介してもらいました。これは艶を消したマットな質感の地にうっすらと文字の彫りが入っており、その文字の上に銹釉が施された作品です。銹釉を施した作品は初めてとのことで、観覧している人も足を止めていました。きっちりとした隙のない成形ですが、銹釉のところが濃いかったり薄かったりという部分があることで、心地よい緊張感に抑えられています。

白磁山なみ花器 DMにも掲載されており、気になっていた作品もありました。「白磁山なみ花器」です。花器の口部分がまるで朝顔のようにゆったりと広がっています。胴の部分はどちらかというと、下部に重心があり先ほどの口の広がりまではシャープな成形になっていました。この口部分の横に広がった部分をよく見ると、上下にゆるやかな波打ちがあります。そしてこの部分を真上から見ると、楕円に近いゆったりとした四角になっています。この波打ち幅は規則的になっており、見る人に心地よいリズム感を与えます。シャープさの中に計算された「抜け感」が中村さんの作品から読み取れる「和み」を感じさせるのではと思いました。まったりとしているだけでは「和み」ということは目立ちませんが、それを引き立たせるシャープで精緻な成形があってこそ引き立つものではと少し発見した気分になりました。

白磁艶消竹形水指 展示作品の中には茶道具もあり、その中で観覧者の皆さんが手を触れて見ていた「白磁艶消竹形水指」という作品がありました。個展などでは「お手をとってどうぞ」と勧められますが、なかなか手をだしにくいものです。そんな中でどういうわけか何人もの人が手を伸ばしていたので気になって私もそばに行ってみました。その名のとおり竹を思わせる節目が入った水指で、その形からは潔さを感じます。艶消だからでしょうか、まるで水分をたたえて青々とした竹を思いおこさせます。その自然を感じさせる空間が人々の手を動かすのでしょうか。

和紙染亀甲文壺・和紙染鉢 恵美子さんの作品は和紙染めを施したもので、どこか懐かしい雰囲気があります。「和紙染亀甲文壺」や「和紙染鉢」は幾何学文を配してありますが堅さは不思議と感じません。染付けの色がよく見る呉須の色に、若干黄味がかったようなしっとりしたブルーのせいでしょうか。二点ともブルーの中にところどころ、朱色の小さなアクセントがあります。この小さな面積の朱色で全体が間延びせず、ぴりっと引き締まって見えるのが不思議です。

 80歳を超えた今も意欲的に作品づくりに取り組んでいらっしゃる中村さん。いつかお会いしたときに「作品づくりは“芸と美”、“技と用”を目指しています。私の手は土と一体になっているのですよ。」と笑いながら艶やかでふわふわした手を握らせていただいたことを思いだしながら鑑賞しました。

■取材雑記
 会場は男女・年齢を問わずほんとうに幅広い方がいらっしゃっていました。中には親子づれのファンの方も。「中村さんの器は実際の使い勝手がとてもいいので…」といいながら煎茶器を選んでいらっしゃった女性の言葉に、作品の魅力が凝縮されていたようでした。

●福岡三越 9階美術画廊
【所在地】福岡市中央区天神2-1-1
【電 話】092-724-3111(大代表)
【駐車場】
【営業時間】10:00〜20:00