
■20世紀の残像 〜そこにあなたの姿はありますか <会期:平成11月23日〜12月24日> |
平成13年11月30日 |
佐賀平野も冬間近か、有田町歴史民俗資料館でちょっと変わった展覧会が開催されていると聞き、出かけてきました。21世紀最初の企画展とのことで「20世紀の残像〜そこにあなたの姿はありますか」という展覧会でした。これはこの100年間に撮影された写真や新聞などを町民の方などから提供された物や所蔵品を展示し、有田の出来事や暮らしを見ていこうというものです。もちろん有田はやきものの街ですので、陶業界の変遷なども見て取れるものでした。展示は資料館奥にある古陶磁参考館で催されていました。
会場へ入るとモノクロを中心とした195枚の写真が、明治・大正・昭和戦前・昭和戦後と時代別に展示されていました。大正時代と思われるやきもの商店を撮影した写真を見ていると、このころは「有田焼」ではなく「肥前焼」と書かれているのがわかります。お店の人は男女ともまだ和装ですが、壺やお皿などが所狭しとディスプレイされている様子は現在とも変わりありません。 また人々とやきものが写っている大正10年の写真でちょっとビックリしたのは、一緒に写っている人と比べてもやきものがとても大きいことです。この写真は井手金作工房にて撮影されたものだそうで、この井手金作は、ロクロ職人のなかでも荒物引きといわれた大物づくりで名を馳せた職人なのだそうです。大物とは焼きあがりの径が1尺2寸(約36cm)以上ある品のこといい、この大物を専門にしているロクロ職人を有田では荒物引きというのだそうです。以前、井手金作がロクロを引いた大型の火鉢を見たことがありますが、その当時の写真をまさか見ることができるとは思いませんでした。
大正時代に入ると有田では職業学校が設立され、その授業風景の写真も見ることができました。生徒たちが一生懸命に絵付けやロクロに取り組んでいる姿を見ていると、現在の有田窯業大学校の風景を思い出します。伝統技術の習得は、今も昔も大きくは変わらないということでしょうか。 また昭和初期の写真を見ていておもしろいなと思ったのは、宴会の会場のあちこちに火鉢があること。今では見かけない様子ですが、当時はこの火鉢も重要な宣伝媒体だったそうで屋号が書いてあるものも多かったそうです。 写真だけではなく「肥前陶報」という大正時代に発行された業界新聞も展示されていました。見出しを見ると「一大品評会を開け」「技術者を優待せよ」「取引の改善に就て」「肥前焼の質的平均を」等と書いてあり、販売拡大などへの模索が伺えます。
戦時中の珍しい資料もあり、「国民科学クラブ」という冊子には有田焼で生産された代用品が特集記事として掲載されています。珍しいものでは陶磁器のポストなどもあり、これは実際に資料館に展示されてもいます。
ところで再来年は有田陶器市が100周年を迎えることもあり、昔の陶器市の様子を再現してみては、という声もあがっているそうです。その当時の様子を伝える写真は昭和28年の大樽という地区を写した一枚です。横断幕やたくさんの人手で賑わう陶器市で、小学生が「陶器市の歌」を歌いながら行進している風景が伺えます。この陶器市の歌を復活してみては、という案が考えられているそうです。 陶器市についてもそうですが、町内の方はこの展覧会をまた違った角度で楽しまれているようです。この展覧会を見に来られた町内の方が写真を見て「この人、知っている」「これはあそこのお祖父さんだ」といった会話も弾むそうです。
有田町の歴史はそのまま陶業界の変遷ともいえる様子がわかるこの展覧会、12月24日まで開催されています。
■お知らせ
企画展「20世紀の残像〜そこにあなたの姿はありますか」開催中も資料館の常設展示はご覧いただけます。今までの企画展では常設展示場も使用して行われていたそうですが、企画展開催中も常設を見たいという声が多かったことから実現したそうです。常設展示ではやきものの製作道具や戦時中の代用品などを見ることができます。
●有田町歴史民俗資料館
【所在地】西松浦郡有田町泉山1-4-1
【電 話】0955-43-2678
【駐車場】有
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