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■初代・松本佩山展
<会期:平成13年2月27日〜3月25日>
平成13年2月27日


photo 「孤高の陶芸家」と呼ばれていた初代・松本佩山(1895〜1961)の作品が一堂に揃った展覧会が佐賀市立図書館で開催されています。この展覧会はフォトジャーナリストの大塚清吾さんによる企画で実現したものです。「このような素晴らしい芸術家がいたことを、地元佐賀の方もあまりご存知ないのです。これを機会に多くの方に松本佩山を知っていただきたいですね。」と大塚さん。展覧会では香炉などの小品から大皿などの作品160点と、作品の下絵や彼のデザイン帳、愛用の道具、写真などが展示されていました。  松本佩山は明治28年(1895)有田の赤絵屋の四男として誕生。美術を学び、図画の教師や警察官などの職業を経て、作陶の道に進みます。1933年には九州から初めて帝展に入選。この時期中央で活躍した九州の陶芸家は彼一人だったそうです。陶芸家板谷波山に師事していたこともあり、分業が進み大量生産を行っていた当時の有田で作家として一人で作陶していた佩山は、異端児としてみられていたようです。佩山は作家としてもユニークで、青磁・色絵・釉裏紅・天目と様々な技法に取り組んでいました。

photo  出展作品を佩山の長男・二代松本佩山さん、佩山の唯一の弟子・森正洋さんのお話を伺いながら見ていきました。
「釉裏紅霊獣文飾大皿」は、象がデザイン化されて描かれており、白磁に紅色が際立つ作品です。二代松本佩山さんによると、この技法はたいへん難しいそうです。紅は銅を含んだ顔料で描かれ、この銅が揮発しやすく、1200度を越えると色がとんでしまうそうです。当時登り窯で作陶していた佩山は、大変神経をつかった窯焚きを行っていたとのことです。

photoまた佩山の作品で特徴的なのは「釉彩盛り上げ」と言われる技法です。これは、色釉薬を絵筆で塗り重ねて文様を描き、彫刻のように文様を盛り上げる技法です。この技法で佩山は昭和4年に特許を取得しています。この技法でつくられた作品「釉彩盛上菊文飾皿」は、実に細かいところまでかき分けられてあり、彫刻したのではないかと思うほどです。また黒地に映える菊の花もバランスよく配され、日本画のような精緻さです。「父佩山はこのようなデザインイメージをよく夢の中で思いついていたようです。いつも枕元には覚書を置いており、起きると夢で見たイメージをメモしていました。」と二代佩山さん。

photo  次に目をひいた作品は「木の葉天目茶碗」です。こげ茶かかった黒地に白い木の葉の姿が浮かびあがって、闇と光を感じるような茶碗です。森さんによると木の葉天目は、本物の葉を置いて焼成し葉の灰で型が表れるので、火加減や葉の選択など非常にデリケートな調整が必要だそうです。

photo 佩山は白磁や青磁の置物にも取り組んでおり、今回二代松本佩山さんも初めて見るという小物もあるそうです。置物では佩山の平面絵画のみならず、立体造形にも果敢な挑戦を試みていた様子を見ることができます。「白高麗百合型香炉」は、なめらかさとシャープさが共存したフォルムが魅力的でした。アールヌーボーを思わせるデザインですが、花弁の根元から先へ向かった直線が優雅さの中にも毅然とした心意気を感じさせます。毅然とした態度でもくもくと一人作陶を続けていた、佩山の姿を垣間見たようです。

 会場にはたくさんの方が観覧され、二代佩山さんなどのお話に熱心に耳を傾けておられました。数十年来佩山のファンという女性は「佐賀でこのような展覧会が開かれるのはとてもうれしいです。初めて見る作品もあり、佩山の世界に引きこまれました」と感想を話していただきました。絵画、造形にも長けた佩山の作品は一人の作家がつくったとは思えないようなバラエティー豊かなものでした。

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■取材雑記
 佩山の作品を一堂に見たのは、これが初めてでした。様々な技法にちょっと驚きましたが、芸術として陶芸の世界を極めた彼の世界に触れられる展覧会でした。お近くの方はぜひ足を運ばれてはいかがでしょうか?

●佐賀市立図書館 2階ギャラリー
【所在地】 佐賀市天神3丁目2-15
【電 話】 0952-40-0001
【駐車場】
【休館日】 月曜日、月末日、特別整理日、祝日、年末年始