
土人形と器展・池田省吾個展
<会期:平成14年7月19日〜7月25日> |
平成14年7月19日 |
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「パワーがあって、おもしろい陶芸作品を作る青年がいるんだよ。」とギャラリーのご主人から聞かされていた青年とは、新人陶芸作家の池田省吾さん。佐賀で初めての個展を開催されると聞き、早速足を運んでみました。場所は有田にある唐津焼など陶器を中心としたのショップ「土の器」。中へ入ると、陶芸ファンがたくさん見学なさっていました。
池田さんにお話を伺い、作品を見ていくことにしました。池田さんは鹿児島県出身の26歳。有田窯業大学校OBで、現在は種子島に窯をもって作陶なさっています。「種子島でとれる土をつかって作陶していますが、実は土掘りが大好きなんですよ(笑)。魚を獲るときにの網の重りに使われる、土の団子があるのですが、この土が自分は気にいっています。」と池田さん。窯業大学校では絵付けを中心に勉強なさったそうですが、現在は穴窯を使って、主に焼き締めの作品を発表されています。
今回の出展もほとんどが焼き締めの作品で、人形や器を中心に花入れや茶碗などもありました。特に目を引くのは人形。どれも個性豊かなユーモラスな顔つきで、その体からほとばしるようなエネルギーを感じさせるパワーあふれる作品です。人形をつくるときには、種子島にまつわる昔話や人物をモチーフとすることが多いそうです。どの作品にも感じられるのですが、どっしりとした安定感と同時に、土が目の前でムクムクと動いて形が変化していくようなスピード感があります。種子島出身の相撲力士「若島津」をモチーフにした人形は、デフォルメされた人体と堅く引き締まった風合いが、力士の鍛えられた肉体と、強靭な精神力を彷彿とさせます。人形の制作は土を手にしながら、イメージを膨らませていき、2〜3時間で一気に形をつくりあげるのだそうです。
器にもちょっと形が変わった物があり、訪れた人の目をひいていました。それは瓦をモチーフにした器。鬼瓦を思わせるモチーフから、中をくり抜いたような器のおもしろい作品です。「これは骨董品から得たイメージでつくりました。私は昔の生活の中で使われた道具が好きで、骨董もよく見てまわります。」と池田さん。陶芸以外にも、瓦はもちろん古い箪笥などにも惹かれるのだそうです。自分が美しいな、いいなと思うものをどんどん表現していきたいという池田さんですが、この作品もそういう池田さんの思いが斬新な発想へとつながったのかもしれません。
同じく鬼瓦をモチーフにした置物もあります。鬼の面を細かいパーツや細工で丁寧に表現してありますが、その細かさとは裏腹に不思議ととてもダイナミックなところが魅力的です。表面のでこぼこによって、土色の変化が出ており、奥行きも感じさせます。恐ろしげなようでいて、どこか親近感も感じるおどけたような表情が、魔よけの意味もあるという沖縄のシーサーが思い出されます。
土器をイメージさせるような写真の作品は花入れです。表面のざらつき感と、絵付けがプリミティブな躍動感を感じさせます。中央に大きく穴が開いていますが、ここから花をいけるようにと作ったのだそうです。独特の発想で表現する池田さんですが、「まだまだ、自分の内面にあるものを土にぶつけて表現している段階です。見た方がどう思われるのか、他人の目で見た作品への意見をたくさん聞きたいです。多くの人の意見を聞き、さらに自分の制作の糧としていければと思っています。」と、日焼けした笑顔で話されます。
 
これらの作品以外にも、徳利や皿、茶碗などがありましたが、どれも同じようなエネルギーの塊を感じました。大胆だけではなく、作品の表面にあるさりげない装飾がよく見ると印花だったり、恐ろしげな鬼のモチーフ作品にはちょっとした動物やキャラクターが配されたりと、見る人に気持ちに強弱を与えてくれる作品でした。これからもどんどん、発表や活躍の場が期待される池田省吾さん。ぜひ注目していきたい若手作家の一人です。
■取材雑記
作品を前に、自分もわくわくしながら鑑賞できたこの個展。どうやら私だけではなく、他の方も「おもしろい!」「今、手にいれておきたい。」となんだか楽しそう。作品の持つパワーで、自分の気持ちも変わるんですね。素晴らしい作品に出会うことができ、また感動できる自分に感謝しながら、「うまか陶も、たくさんの人にやきものの良さを伝えられるように、がんばらねば!」と肝に命じました。
●土の器・松永陶苑
【所在地】西松浦郡有田町本町
【電 話】0955-42-4047
【駐車場】有
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