  
       
      
      
        
          
            襲名記念14代今泉今右衛門展 
            <会期:平成15年11月6日〜11月11日> 
             | 
           
          
            | 平成15年11月6日 | 
           
          
            
             
             | 
           
          
              街頭のいちょうの木も随分と色づき、こちら九州でもすっかり秋が深まってきました。そんな秋の一日に、「襲名記念14代今泉今右衛門展」へ出かけてきました。 
            今右衛門さんは、平成14年2月に14代今泉今右衛門を襲名、地元九州では初の個展ということもあって、会場となった大丸・福岡天神にはオープン時よりたくさんのファンが詰めかけました。 
             会場には14代今泉今右衛門さんの作品約90点を中心に、食器および歴代今右衛門の作品、また今右衛門窯の食器をつかったテーブルコーディネートなども展示され見ごたえのある内容となっています。14代今右衛門さんは色鍋島の伝統を受け継ぐ窯主、また現代陶芸作家として今後どのような作陶活動をされるのか、注目されている作家の一人です。 
              
             今右衛門さんは、江戸時代から伝わる「墨はじき」技法を駆使し、現代の色鍋島をどう生み出していくのか取り組まれています。「墨はじき」とは、墨で文様を描きその上を染付でぬります。すると墨の部分は撥水性があるので、染付の絵具をはじき、そして焼成すると 墨は飛んでしまうので、白い抜きの文様ができあがるという、いわゆるろうけつ染めと似たような原理の技法。従来の絵付け技法に比べると、控えめな印象の技法ではありますが、この墨はじきに様々なバリエーションを加えた作品を今回見ることができ、人々の注目を集めていました。今回私はこの墨はじき技法もさることながら、大変新鮮な印象を受ける、今右衛門さんの文様の構図を中心に作品を見ていくことにしました。 
             
              「色絵藍色墨はじき雪文花瓶」もその「墨はじき」技法を用いた作品です。雪文と呼ばれる古典的な文様を大胆な構図で配置し、リズム感あふれる地文様、精緻な地文様を組み合わせることで、モダンで変化に富んだ作品となっています。また「色絵墨色墨はじき梅文花瓶」という作品からも、同じような印象を受けます。「墨はじき」を用いられている文様は、控えめなものが多いのですが、今右衛門さんの作品を少し離れてみると、絵付けの中に平面と立体が交差しているような不思議な感覚を受けるものが多いことに気付きます。 
            ちょっとここで、昔の絵図や屏風絵などを思い出してください。こういった絵図では、場面や場所を区切るのに、霞や雲を用いられていることが印象的です。大きく配された雪文や、画面を区切るように配された梅の枝などがちょうどその霞や雲のような役割をしているのでしょう、白磁の部分と地文様の部分が同じ器面であるにもかかわらず、違う時空にあるかのような空間を演出しているのだと思われます。 
             
             また大きな文様だけではなく、墨はじきで描かれた控えめな地文様も、そういった空間演出の大きな要素となっている作品もあります。「色絵墨色墨はじき草花文額皿」という作品です。更紗布にあるような草花文が、墨・緑・赤といった少ない色数で表現されています。バックの地文様は墨はじきによる、細いストライプ。このストライプ は、大きく区切られた雲文ごとに、角度が変えられているのがわかります。 
            これによって、動きのある草花文のバックに別の空間の動きが生まれ、装飾的に配された一部の葉の平面的な地文様が浮かびあがってくるような感覚を与えてくれます。一定の直線や、画面全体を横切る曲線などで動きを表現するのは、浮世絵などにもよく見受けられる構図ですが、こういった非常に構築的な文様の組み合わせによって、今右衛門さん独特の世界が表現されているのではないでしょうか。 
             
              文様を用いた空間演出に加え、絵具のグラデーションで器形全体の空間を彩るような作品もあります。「色絵薄墨墨はじき雪文鉢」は淡い墨色のグラデーションをベースに、墨はじきによる雪文が器面全体に広がっています。グラデーションによって画面の広がりがあるとともに、しーんと静まりかえった針葉樹林の中にいるような静けさも感じます。雪文をよく見ると中央に向かうにつれ、透明感のある釉薬が施されているので、雪文が盛られているような状態になっています。薄い墨色と雪文の2つのグラデーションによって、より幻想的で荘厳な雰囲気に仕上がっているのでしょう。 
             
              精緻でありながら、躍動感を感じる構図。次なる鍋島の新しい意匠感覚に触れさせていただいたような展覧会でした。 
            伝統的な技法や文様も、今右衛門さん独自の美意識によって新鮮な光をはなっているようでした。次はどういった世界を見せていただけるのか、とても楽しみになるような鑑賞でした。 
             
             
            ■お知らせ 
            下記の日程・場所でも「襲名記念14代今泉今右衛門展」が開催されます。 
             ・さいか屋藤沢店 
              (神奈川県藤沢市藤沢555 電話0466-27-1111) 
             ・平成15年11月19日〜11月25日  
             
             
            ●大丸・福岡天神 
            【所在地】 福岡市中央区天神1-4-1 
            【電 話】 092-712-8181(代) 
             
             | 
           
          
            
             
             | 
           
        
       
       
       |