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武雄の現代の陶芸家たちZ ―伝統と挑戦―
<会期:平成18年6月16日〜7月16日>
平成18年7月8日

 あいかわらず雨の多い毎日。こちら佐賀県の昨日の七夕は、残念ながら雲におおわれた夜空でした。
さて今回訪れたのは、唐津市鎮西町にある佐賀県立名護屋城博物館。ただいま「武雄の現代の陶芸家たちZ」展が開催中です。この展覧会は、佐賀県武雄市在住の陶芸家を中心としたグループ「酔陶会(すいとうかい)」メンバーの作品を展示紹介するものです。
11人の陶芸作家・34点の作品が出展され、日展、日本工芸会など会派をこえた陶芸作家の作品が一堂に見ることができます。
また今回は今年2月に武雄市の重要文化財に指定された武雄古唐津焼の大型の作品4点、武雄市内の窯跡から発掘された陶片資料など古陶磁も同時に特別展示されています。

 それでは「酔陶会」による現代陶芸作品をいくつかご紹介していきましょう。
まずは、伝統的な「叩き技法」と呼ばれる成形法に取り組まれている金子認さん。金子さんの窯付近は多々良(たたろう)と呼ばれる地区で、かつてここでは紐状の粘土を積み上げ、内外より叩いて成形をする「叩き手」を用いた大甕づくりが盛んなところでした。しかし生活環境の変化で、この大甕づくりも衰退。金子さんは「叩き手」を継承する作り手でもあります。
▲叩き灰釉壺
 「叩き灰釉壺」もこの「叩き技法」を用いた作品のひとつ。器の内側、外側から木製のラケットのような道具をつかって土を叩いていくのですが、この道具の表面には網の目のような彫りが施されています。
これにより、器の表面には叩いた跡がランダムにみられるようになります。「叩き灰釉壺」も近づくと、きゅっと叩きしめられた形とその表面の網の目のような跡をしっかり見ることができます。
また表面には釉薬が不規則に掛けてあるため、網の目がより浮き上がって見えることから、作り手の力がダイレクト感じられ、プリミティブな作品の魅力で見る人をひきつけます。

 
▲陵断紋瑠璃釉
 次は端正な磁器作品を作り続けていらっしゃる松尾重利さんの作品をご紹介。計算された器形に、深い神秘的な瑠璃色にはっとさせられる「陵断紋瑠璃釉」。緊張感のあるフォルムと、海の底を思わせるような色合いの作品で、思わず足をとめる人が多く「持ってかえりたいわ(笑)」という女性客もいました。
この深い色合いは、瑠璃釉を厚めにかけることで表現されています。




 続いて青磁を中心とした陶芸家・中島宏さんの作品。ご存知の方も多い中島宏さんは、地元・武雄をはじめ、韓国や中国などの古陶磁研究を通して、40年以上も青磁の作品に取り組み、一貫して「青の美」の追求を続けている陶芸家。独特の色合いの青磁釉の作品は「中島青磁」として高い評価を受けています。
▲天青瓷線彫文壺

「天青瓷線彫文壺」はゆったりとした器形に、波紋のような広がりをみせる線彫りが、まるで青銅器のような重厚な雰囲気をかもしだしている作品です。
 

▲緑褐釉櫛目草文皿
 現代作家の作品をいくつかご紹介しましたが、今回特別展示されていた武雄古陶磁の名品もご紹介しましょう。大皿や甕といった大型の4点は、今年2月に武雄市重要文化財に指定され、指定後の一般公開はこれがはじめて。
 唐津焼の生産は16世紀末に唐津市北波多の岸岳周辺ではじまりますが、文禄・慶長の役以後、肥前地区に広く拡大します。特に武雄地区でつくられた陶器は「鉄釉」・「銅緑釉」・「白土」などを用いた二彩や単彩が代表的です。
「緑褐釉櫛目草文皿(1650〜90年代)」は径が50cmもある大皿。器の表面には、勢いのある櫛描きが施され、その上にはさらに大胆に鉄釉と銅緑釉の二色が掛けわけられています。一見無造作な装飾のようですが、離れてみると二彩のバランスが非常によいことがわかります。
 また最近の窯跡出土品研究から、武雄では陶器だけではなく、磁器製品(初期伊万里)も生産していたことがわかっています。これらの貴重な陶片も同時公開され、古陶磁ファンにとっても、興味深い鑑賞ができます。


▲窯跡出土の陶片
 近場に「唐津」・「有田」とやきもの産地があるため、まだまだやきもの産地として広く認識されていない武雄ですが、この展覧会を鑑賞することで、やきもの生産の草創期、そして現代作家のとりくみと二つの側面から知ることができます。また古陶磁を見ることで、現代作家がいかに伝統を踏襲し、また自分らしさや現代性を作品に加味しているのかといった作陶活動をも垣間見ることができる構成となっています。
 「酔陶会」の活動、及び武雄の古陶磁研究をさらに活発化することで、やきもの産地としての「武雄」をより多くの人に知っていただきたいものです。


■お知らせ
名護屋城博物館では下記の日程にて「夏休み親子体験学習」が開催予定。
作って飾ってみよう! 韓国のノリゲ(胸元を飾る装身具)
【日時】 7月30日(日)  13:30〜16:00
【場所】 当館 図書閲覧室
【内容】 折り紙で製作します。
【参加費】 無料
【申し込み方法】 
7月10日(月)〜7月27日(木)に電話またはFAXでお申し込みください。
【募集定員】 小・中学生と保護者 40名(先着順)
【準備品】 針、糸、鋏、糊

●佐賀県立名護屋城博物館
【所在地】 唐津市鎮西町大字名護屋1931-3
【電 話】 0955-82-4905
【駐車場】 有
【休館日】 月曜日(祝祭日の場合は翌日)、年末年始