英国の古陶・スリップウェアの美
<会期>平成16年1月7日(水)〜3月28日(日)
 泥漿状の化粧土(スリップ)で文様を描きだす手法によって作られた陶器「スリップウェア」。英国でこの手法が行われ始めたのは17世紀頃といわれ、同世紀半ばから末には、トーマス・トフトら有名陶工がスリップ手法を駆使した在銘の飾大皿を残しました。
 18〜19世紀にかけて、この伝統はスタッフォードシャーなどの窯場に受け継がれ、スリップによる抽象文様や線文様が活々と描かれた無銘の日用雑器が数多く作られました。しかし、英国の風土から生まれ、多くの家庭で愛用されたこれらのスリップウェアも、19世紀後半には確かな光を失い、20世紀初頭には製作が途絶してしまったのです。
 これらの英国のスリップウェアに初めて注目したのは、柳宗悦や民藝運動の先駆者達でした。1924年(大正13)、濱田庄司が英国から持ち帰った無銘の10枚近いスリップウェアの大皿は、彼らの美への直観を確かなものにし、18〜19世紀にかけて作られた英国日用雑器の埋もれていた真価を世に認めさせることとなりました。
 「日本の眼」が先鞭をつけた英国スリップウェアの存在感溢れる造形美や自在な文様美。その伝統は、民藝運動に参じる作陶家達によって脈々と引き継がれ、東と西の異なった文化を超えた普遍的な美しさを鮮やかに実証しています。
 「一度日本に來てゐるスリップ・ウェアを集めて展覽會をしたいと思ってゐるが、何れその折が來るだろう。(中略)今後その價値は益々認められるに至ると思ふ。」(柳宗悦) 昭和8年『工藝』第25号 スリップ・ウェア特集号「同人雑録」)
 『工藝』でスリップウェアが特集されて以来70年、どの国よりも数多く日本に渡って来ている英国スリップウェアの全貌に光を当てる初の試みがついに実現しました。本展では、日本民藝館の所蔵品を中心に、各地美術館や個人所蔵家諸氏の出品協力によるスリップウェアの優品130余点を一堂に展観し、その魅力に迫ります。


会場 日本民藝館
住所 東京都目黒区駒場4−3−33
電話 03-3467-4527
入館料 一般1,000円(800)/大高生500円(400)/小中生200円(150)
※( )内は20名以上の割引料金
交 通 井の頭線(京王帝都)駒場東大前駅(西口)徒歩5分
小田急線東北沢駅徒歩15分
開館時間 10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日 毎週月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休館)
URL http://www.mingeikan.or.jp/
関連イベント ・記念講演会「英国アーツ・アンド・クラフツ運動と民藝運動」
講師:タニヤ・ハロッド氏(英国王立芸術大学客員教授・通訳付)
日時:3月6日(土) 18:00〜19:30
場所:日本民藝館大展示室
料金:入館料のみ
※要予約 定員100名
巡回展 豊田市民芸館 平成16年6月1日〜8月29日