企画展 「備前焼の魅力―伝統と創造―」ヒダスキ、ボタモチ、ゴマにサンギリ…釉薬を使わなかったやきもの |
<会期>平成16年4月24日(土)〜6月27日(日) |
備前焼は、岡山県備前市伊部を中心に、およそ800年間にわたって今日まで続けられており、瀬戸、常滑、丹波、信楽、越前とともに日本陶磁史上、中世の六古窯の一つに数えられる名窯です。
轆轤成形、高温焼成による須恵器にその起源をみる備前焼は、平安時代末期頃から室町時代にかけて、主に壷、擂鉢、大甕等日常生活用の雑器を生産していますが、桃山時代には茶の湯の興隆に伴い、従来の雑器に加えて水指や茶入、花生等の茶陶の名品や懐石用の食器類が数多く焼造されています。桃山時代は備前焼史上、画期的な時代といってよく、革新的な美意識に基づく優れたやきものが登場し、今日の備前焼のありようにも多大な影響を及ぼしています。江戸時代に入ると備前藩主の庇護の元、細工物や彩色備前、白備前、青備前なども制作され、備前焼の振興が図られます。しかし、日本初の磁器である伊万里焼や京焼の人気に押され、無釉焼締の備前焼は活況を失い、明治から昭和初期に至るまで停滞しました。
備前焼が再び活況を呈するようになるには、金重陶陽による備前焼再興への尽力を待たなければなりませんでした。備前焼以外でも美濃の荒川豊蔵らをはじめとする陶芸家により、国内各地の桃山陶の調査・研究が進められます。そうした昭和初期の動向を背景に、金重陶陽は土の吟味や成形方法、さらに焼成方法等の研究を踏まえ、古備前本来の美を追求し、創造性豊かな優れた作品を残しています。個人の美意識の表現という今日の鑑賞陶器ないし芸術としての備前焼のありようは、「備前焼中興の祖」と呼ばれる金重陶陽によりスタートし、その後の優れた陶芸家の活動に引き継がれ、新たな伝統を形成しているといえます。備前焼の魅力は、基本的には釉薬を用いず、長時間高温で焼き締めた土味や「桟切り」「胡麻」「牡丹餅」「緋襷」等のさまざまな窯変から生まれる飾り気のない美しさにあります。さらに、直線文や櫛目波状文等を刻んだり、篦目を施したりする加飾技法や、肩や胴に耳や擂座等を張り付ける技法等を駆使し、味わい深い作品が制作されてきました。今日では、備前ならではの土や焼成方法、作家固有の造形感覚に基づく現代の備前焼といえる作品が制作されています。
本展は、金重陶陽や山本陶秀、藤原啓、藤原雄の4人の人間国宝をはじめ、現代備前焼の代表的陶芸家の作品を紹介するとともに、室町・桃山を代表する重要文化財「四耳壷」「筒大花生」を含め、金重陶陽らが範とした桃山時代等の古備前の名品、併せて約130点の作品を展示し、現代もなお旺盛な活動を続ける備前焼の歴史とその魅力を紹介しようとするものです。
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■構成・出品作家
第1部 古備前の美と細工物の世界
鎌倉・室町・桃山・江戸時代の備前焼
第2部 備前焼の復興と現代備前の出発
金重陶陽・藤原啓・山本陶秀・金重素山・藤原建・藤原雄
第3部 今日の備前焼
松井與之・山本雄一・伊勢崎満・伊勢崎淳・森陶岳・原田拾六・吉本正・金重晃介・山本出・隠崎隆一 |