企画展 表現者 河井寛次郎展 
<会期>平成16年5月28日(金)〜8月22日(日)
  河井寛次郎(1890-1966)は、近代の陶芸家の中でも、最も自己を自由に表現した作家でした。フランスの著名な文化人アンドレ・マルローは、河井寛次郎の晩年の激しい作風を見て、「ベートーヴェン」と叫んだと言います。
 寛次郎は常に成長し続けた陶芸家です。卒業した東京高等工業学校と、その後勤務した陶磁器試験場で身につけた高度なテクニックを評価された新進作家の時代。柳宗悦と知り合って、無名の工人が作り出した日用品の簡素で力強い美しさに惹かれた民藝運動の時代。そのような研鑽の日々を経て、戦後は自らの内面からわき出てくる感動を、そのまま造形の中に表現しうる自由な境地に到達したのです。
 魔術と呼ばれた釉薬の技は、得意としていた辰砂(赤)をはじめ、呉須(青)や民藝調の海鼠、独自に造りあげた晩年の碧釉など多彩を極め、いずれも珠玉のような輝きをみせています。京都・五条坂の登窯からは、ろくろの技による壺や皿はもちろん、型を用いた扁壺や硯など、思うがままの自由で大胆な形が生みだされましたが、いずれも美しい釉薬と、筒描、貼文、打薬、練上、泥刷毛目などの多彩な技法で飾られました。
 晩年には用を離れた陶彫や陶板も試みています。形への飽くなき関心は、寛次郎を木彫や家具製作など、陶芸以外の分野にも踏み込ませています。著述の中で「新しい自分がみたいのだ―仕事する」と述べるように、自らに枠をはめることなく、晩年に至っても新たな分野に挑戦し続けました。常に新しい技法に挑み、自由な造形世界をひらいた寛次郎の作行きの広さは驚異的です。
 晩年は書や文筆にも範囲を広げて、自己を思うがままに表現しています。寛次郎の創作活動は、そのように奔放に繰り広げられましたが、いずれの作品にも、骨太な寛次郎の個性が色濃くあらわれています。寛次郎は名もない職人の質実な仕事を限りなく尊敬していましたが、自身の歩みは、まぎれもなく自由な表現者に至るものでした。
 この展覧会では、晩年の自由な境地を示す陶芸作品を中心に、初期や民藝期の代表作、木彫作品、デザインした家具やキセル、書などもあわせて展示して、表現者河井寛次郎の到達点を多面的に検証します。



会場 岐阜県現代陶芸美術館 ギャラリーT
住所 岐阜県多治見市東町4-2-5
電話 0572-28-3100
入館料 一般800円(700円)/大学生600円(500円)/小中高生400円(300円)
※( )内は20名以上の団体料金
交 通 ・中央自動車道多治見IC(小牧JCT経由)から約10分、中央自動車道土岐IC(岡谷JCT経由)から約10分
・JR多治見駅から車で約10分
・JR多治見駅から東濃鉄道バスでセラパーク・現代陶芸美術館口下車、徒歩8分
・多治見市コミュニティバス オリベルート(土・日・祝運行)JR多治見駅発・MINO発 セラパーク下車
開館時間 10:00〜18:00(入館は17:30まで)
休館日 毎週月曜日(ただし、月曜日が休日の場合はその翌日)
URL http://www.cpm-gifu.jp/museum
関連イベント ・講演会
場所:岐阜県現代陶芸美術館プロジェクトルーム
○6月19日(土)14:00〜
「表現者 河井寛次郎−晩年の飛翔−」
 講師:矢島新(渋谷区立松濤美術館主任学芸員)
○8月1日(日)14:00〜
「私と河井寛次郎」
 講師:第12代三輪休雪(陶芸家)

・ギャラリートーク
会期中、毎週日曜日の午後2時より、当館学芸員による作品解説を行います。