9世紀頃、突如として「イスラーム陶器」が出現します。その背景には中国製陶磁器との出会いがありました。 
             アッパース朝の統治が安定しはじめた8世紀末から9世紀、ユーラシアの東端では唐王朝が空前の繁栄を享受していました。人々はきそって珍奇な品々を求め、アッパース朝の都バグダットへ集まりました。そうした交易品の一つに白磁があったのです。あくまでも白く、金属器のような硬質感を持つ唐白磁はイスラーム世界の人々に熱狂的に受け入れられました。以降、イスラームの諸都市では中国陶磁のうつしが大量に生産されることになります。しかし、こうした行為はただの「模倣行為」ではありませんでした。技術革新を伴った「変革」の過程だったのです。「イスラーム陶器の到達点」のコーナーでは色釉を用い、華麗な上絵付けの「ミナイ手陶器」、金属の光沢を再現した「ラスター彩陶器」の逸品から、中国陶磁に追いつき追い越せと切磋琢磨したイスラーム陶工の美意識が読み取れます。 
             また、当展覧会ではイスラームの陶工たちが生みだすことのできなかった磁器とは何か、追い求めた白さと硬質感を体感していただくよう、実際にさわっていただくコーナーを設けます。彼らが追い求めた何かを、追体験していただけることでしょう。 
             
            ■出品内容 
            イスラーム陶器 約80点 
            中国陶磁    25点程度 
            その他資料 |