人間国宝の日常のうつわ ― もう一つの富本憲吉
<会期>平成16年12月11日(土)〜平成17年2月27日(日)
 富本憲吉(1886−1963)は、「色絵磁器」で第一回の重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定され、陶芸界で二人目となる文化勲章受章者となった陶芸家です。日本の近代陶芸の歴史においても、個人の美意識に基づく作品の制作を初めて成し遂げた先駆者として名高く、欠くことのできない存在です。作陶では「模様から模様をつくらず」という言葉を生涯の信念とし、写生にもとづく数々の優れた文様を創作し、それらを作品に描きました。作品については、白磁・染付・色絵・金銀彩などに代表される極めて格調高い作品群が中心であり、また多くの人々がそれらを思い浮かべることでしょう。
 その富本が、奈良の安堵村で本格的に作陶活動を始めて間もなくの1917年に、「私は今年から出来得る限り安価な何人の手にも日常の生活に使用出来る工芸品をこさえたいと思い出しました。このことは私に取って随分重大なことで、今後の私の進むべき道に非常な関係があることと思います」という文章を残しています。
 このような、かなり早い時期から日常のうつわに強い関心を寄せていたことはあまり周知されていません。その後の富本は、その気持ちを具現化するかのように、信楽(滋賀)で作陶を行ったのを皮切りに、波佐見(長崎)・益子(栃木)・瀬戸(愛知)・九谷(石川)・京都など、国内各地の窯業地に赴き、その地でつくられた既製の素地に独自の模様を描いて、日常の生活に結びついた陶磁器の制作を積極的に行いました。その活動は窯業地における陶磁器生産にも大きな影響を与えたのです。
 本展では、富本が「安い陶器」、あるいは「万民のための安価な陶器」と呼んだ、量産を目的に作られた日常のうつわを広く紹介します。またあわせて、それらと同じ時代に富本が生み出した白磁や染付、色絵・金銀彩の代表作も展示し、その活動に求めた富本の想いを探ります。

会場 東京国立近代美術館工芸館
住所 〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園1−1
電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
入館料 一般200円(100円)/大学生70円(40円)/高校生40円(20円)
※( )内は20名以上の団体料金、いずれも消費税込み/小・中学生および65歳以上は無料
●無料観覧日 1月2日・2月6日
交 通 地下鉄東西線 竹橋駅1b出口徒歩8分、地下鉄東西線・半蔵門線・都営新宿線 九段下駅2番出口徒歩12分
休館日 毎週月曜日(但し1月3日、10日は開館し、1月11日は休館)、年末年始(12月29日〜1月1日)
開館時間 10:00〜17:00(入館は16:30まで)
URL http://www.momat.go.jp/
関連
イベント
・ギャラリートーク(講師および工芸課研究員によるガイド)
 12月19日(日) 「陶芸家、富本憲吉について」 辻本勇(富本憲吉記念館館長)
 1月 9日(日) 「富本憲吉の日常のうつわ」  唐澤昌宏(工芸課主任研究員)
 1月 16日(日) 「富本憲吉先生の思い出(仮称)」 柳原睦夫(陶芸家、大阪芸術大学教授)
 2月 6日(日) 「近代陶芸と富本憲吉」  金子賢治(工芸課長)
 2月 20日(日) 「富本憲吉と量産について」木田拓也(工芸課研究員)

・タッチ&トーク(ボランティアによるガイド)
 会期中の毎週水・土曜日
 「さわってみようコーナー」で当館所蔵品に関する制作工程の資料や参考作品などを通して、さまざまな素材・技法の持ち味をお楽しみいただいた後、会場に並ぶ作品の見どころやさまざまなエピソードをご紹介します。

※各日とも午後2時から工芸館会場にて
※参加費は無料(入館に際しては観覧料が必要です)

・人間国宝・巨匠コーナー
 
近代工芸やデザインを代表する作家の作品を紹介するコーナーです。陶磁、ガラス、漆工、木・竹工、染織、人形、工業デザインなど、様々なジャンルから選りすぐった名品をお楽しみください。(展示替えあり)