トップ >> 佐賀県の陶芸作家 >> 中尾恭純

ミュージアムビレッジ

佐賀県の陶芸作家
 
作家写真 中尾恭純
(有田町)
昭和25年有田町生まれ。有田工高窯業科卒。井上萬二氏について5年間ろくろを学び、白磁から出発。46年九州・山口陶磁展、西部工芸展、県展で初入選。50年には日本伝統工芸展、翌51年には一水会展でも初入選。以後各公募展で入選、入賞を重ねる。59年からは白磁に加え、独自に考案した彩色象嵌(さいしょくぞうがん)などの技法を追求。日本伝統工芸会正会員、一水会委員、県陶芸協会理事。
白磁の表面に淡い色合いの網目状のデザインが広がる。予備知識がないと、文様の制作手順を想像するのは少々難しいかもしれない。
名付けて彩色象嵌(ぞうがん)。柔らかい生地にカッターナイフで線を刻み、顔料を埋め込む技法だ。

交差する線は機械的だが、縦糸と横糸で複雑な絵柄を浮き出させる織物に似て、線の絡みあいが微妙な視覚効果を生み出している。

ほんの5、6色がそれ以上の複雑多彩な色合いに見える不思議。「トルコのモザイクなんかとても好きですね」というのもうなずける。

もう一つ、木綿針を使う点刻象嵌技法も得意。こちらは無数のドットに彩色する手法で、印象派の点描法を思わせる絵画的テクニック。

工房は祖父の名に由来する中仙窯。弟の龍純さん(山水など)、英純さん(和紙染め)と一緒に三兄弟で運営。一工房としては類を見ないようなバラエティーに富んだ作品群を生んでいる。

師匠の井上萬二氏に指導を受けたのが出発で、「5年ほどはろくろの形だけで見せるような作品でした」というように、白磁はこの人の原点。

2年続けて日本伝統工芸展に落選したことが文様の世界に踏み込む契機になった。最初の象嵌の試みは白磁の周囲に刻んだ呉須(ごす)の青い線だった。

アクセント程度のシンプルな線が次第に複雑化し、古典的な亀甲文(きっこうもん)や四方襷文(よもだすきもん)をアレンジしたより高度なものに発展。中尾さんの中でデザインへの興味が大きく膨らんでいく。

当初は顔料のはみ出しをろうで止め、色を入れてはろうを焼き切り、また色を入れ…という細かい手作業の繰り返しだったが、「最近は何度もろうを焼かなくていいように工夫しています」とのこと。技術は確実に進化しているようだ。

フリーハンドの象嵌の腕は、絵付けなら手がきにあたる名人芸。さぞきちょうめんな忍耐の人かと思ったら、「性格は全くち密じゃなくて、逆でしょう」と笑った。気取らない人だ。

ただオリジナリティーの大切さをだれよりも熟知しており、「有田にはさまざまな技法を持った陶芸家たちがいるので、常に新しいものを生み出していかねばならない」と強調する。

海外出品は、平成5年に米国のスミソニアン国立美術館で行われた「日本現代陶磁展」以来。大英博物館出品作の構想も固まりつつある。

「アメリカでは作品についていろいろと熱心に聞いてくる人が多かった。イギリスはどうか分からないが、どんどん質問が集まるような作品を出品したいですね」。幾何学的工夫というのは、ある意味で人類普遍の発想。西欧人にも親しいものではないかと思った。
出展作品
イメージ
彩色象嵌壷

イメージ
点刻象嵌花器

---
■中仙窯
西松浦郡有田町中部乙
JR有田駅から車で2分、徒歩10分。
展示場あり。駐車場約10台。
電話0955(42)2856
---

このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。
※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。
Copyright(C)2002 Fukuhaku Printing CO.,LTD
このサイト内の文章や画像を無断転載することを禁じます