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やきものにみる文様VOL.9 麻の葉文様(あさのはもんよう)

 六角形の中に六個の菱形を結びつけ六星形をつくり、その中心と各先端を放射線で結んだ幾何学文様、その形が大麻の葉に似ているところから、近世になってこの名が生まれた。古くは平安時代の仏像の切金文様のなかや、鎌倉・室町時代の繍仏(刺繍によって仏像や菩薩などをあらわしたもの)のなかにみられるといわれる。江戸時代には染織品に多用され、まっすぐにのびる麻にあやかって、子供の産着や下着の文様として用いられた。

文化・文政(1804-30)の頃、大阪の名優嵐璃寛が「妹背門松」の狂言に、麻の葉文様の衣装で油屋お染に扮したのが評判となって「お染形」ともいい始めた。明時代の中国の古染付と同じ形をした水指が有田皿山で17世紀前半につくられるようになり、その代表的な作品の一例「染付山水文胴締水指」の背景地文に麻の葉文様が描かれている。ここに紹介する「色絵輪繋文皿」は18世紀後半の作と思われる鍋島藩窯の作品であるが、中央の左端から右端にかけて四個の如意頭繋文と輪を交互に組み合わせて配し、如意頭繋文には赤の、輪には水色の上絵具で彩色している。上方背景には「墨弾き」の技法によって呉須の青地に白抜きで麻の葉文様をびっしりと描き込んでいる。

この皿の図柄は鍋島藩窯では最盛期から後期までくり返して用いられており、その新旧は、裏文様で判別される。写真の作品とほぼ同様の作品が、染付青磁ではあるが、東京・旧芝離宮庭園遺跡から出土している。
(吉永陽三)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No.12号より(昭和60年発行)

■写真…色絵輪繋文皿
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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