やきもの図書館 やきものの技法

磁器の技法
染付け コピー
イメージ  藍色一色で文様が描かれたものを染付(そめつけ)といい、中国では青花(せいか)、朝鮮半島では青華白磁といいます。技法は、白い素地に呉須(ごす)という絵具で絵付けし、透明釉をかけて焼成するというものです。呉須は酸化コバルトを含む鉱物で、天然ものは昔から希少であったため江戸時代でも中国から輸入されていました。藍色に発色するのは呉須が酸化コバルトを含んでいるためで、約1300度の温度と酸素の少ない還元炎(かんげんえん)で焼成されて発色します。ひとくちに藍色といっても、淡いものや黒みを帯びたものなど色合いはさまざまで、発色の微妙な変化を楽しむのも染付の醍醐味といえるでしょう。染付技法のルーツは中国にありますが、すでに宋の時代から試みられ、14世紀の元時代には素晴らしい染付が完成しています。その人気は高く、西アジアやアフリカにまで輸出されるほどでした。日本の染付は17世紀の初め、渡来した朝鮮陶工たちの手によって有田で始まりました。  写真例の『染付菊唐花文皿(そめつけきくからはなもんざら)』は鍋島藩窯の染付で、墨弾(すみはじ)きによる白抜き描線が組み合わされています。鍋島の染付は三段階の濃度に分けられるのが特徴とされ、一番濃いのが線描きで、枝・葉、花の順でうすくなっています。
■染付菊唐花文皿(そめつけきくからはなもんさら)
1690〜1730年代 C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵

色絵 コピー
イメージ  藍一色の染付に対し、赤・青・黄・緑・紫など多彩な色を施したのが色絵です。別名を赤絵、錦手(にしきで)、中国風に五彩(ごさい)とも呼ばれ、やきものの装飾技法の中でももっとも華やかなものといえるでしょう。色絵は本来、透明釉をかけて焼き固めた上に色絵具で文様を描き、700〜800度の専用窯で焼きつけます。染付は釉の下、素地に絵付けする下絵付ですが、このように色絵では釉の上に絵付する上絵付という技法が用いられます。色絵は、やきもの先進国の中国で16世紀に入るころから盛んに焼成されるようになりました。明の時代には五彩と呼ばれて完成し、次の清の時代には、中間の微妙な色も出せるようになった粉彩(ふんさい)技法の発明により、さらに精巧な絵付がされるようになりました。  中国の色絵は直接日本に伝わり、江戸時代前期に有田で焼かれ始めています。江戸時代、陶器の色絵は日本各地で焼かれていますが、磁器の色絵は江戸の後期まで有田が独占していました。これは、磁器の焼成そのものが肥前の産業秘密だったからです。
■色絵団龍地詰文菊花皿(いろえだんりゅうぢづめもんきっかさら)
1680〜1710年代 C佐賀県立九州陶磁文化館柴田夫妻コレクション

白磁・瑠璃 コピー
イメージ  白磁は、名のとおり白い磁器を指し、白い土に無色透明あるいは半透明な釉(うわぐすり)をかけて焼成したものをいいます。白い土を用いたもののみが白磁で、黒い土に白釉をかけたものは白磁の類には入りません。白磁は6世紀ごろから中国で焼かれ始め、唐時代のけい州窯や宋代の定窯(ていよう)などが白磁の名窯として名を留めています。中国最大の窯場景徳鎮(けいとくちん)でも、元時代になるとそれまで作られていたごく淡い青磁釉のかかった「青白磁」に加え、乳白色のやわらかな白磁が作られました。
 日本における磁器の原料を産出したのは有田が最初です。江戸時代のなかばごろには天草の下島から有田のものより優れた原料がとれるようになりました。これは「天草陶石」として現在でも広く用いられています。瑠璃釉(るりゆう)とは、白磁釉に呉須を混ぜて作られたもので透明感のある藍色を特徴とし、藍色の薄いものを特に薄瑠璃釉といいます。
■白磁菊花形鉢(はくじきっかがたはち)
1970〜1700年代 C佐賀県立九州陶磁文化館柴田夫妻コレクション
■瑠璃釉瓢形瓶(るりゆうひさごがたびん)
17世紀後半 C佐賀県立九州陶磁文化館柴田夫妻コレクション

青磁 コピー
イメージ  青磁は淡青色一色のやきもので、もっとも東洋的なものといわれています。釉(うわぐすり)に含まれる鉄分が還元され、あのしっとりとした深みのある淡青色に仕上がるわけですが、この焼成技術には大変高度なものが要求されます。還元とは酸素を奪うことであり、窯の中では不完全燃焼状態の炎(還元炎)をつくりますが、この際煤(すす)が出るようだと仕上がりは煤けた汚い色になり、それを避けるため空気を送れば磁器が黄ばんでしまうのです。「雨過天青(うかてんせい)」、つまり雨上がりの澄んだ空の青さを理想とした青磁が完成されたのは、中国の宋時代でした。宮廷用の器を焼く官窯(かんよう)では、古来よりの憧れであった碧玉(へきぎょく)の肌を持つ青磁が焼かれ、以来青磁はやきものの王として君臨します。
 日本では磁器の始まった当初から青磁が焼かれ、有田のもっとも古い窯跡からは美しい青磁の徳利が出土しています。鍋島藩窯でも焼かれており、現代でも多くの作陶家が宋代の青磁を超えようと挑戦を続けています。
■青磁六角菊花鉢(せいじろっかくきっかはち)
1760〜80年代 C佐賀県立九州陶磁文化会館柴田夫妻コレクション